ガートナージャパン(Gartner)は5月18日、世界のCEOおよび上級経営幹部を対象にした調査結果を発表した。

  • CEOの2023~2024年の戦略的なビジネス優先課題のトップ10(上位3項目に挙げられた回答の内容をGartnerが分類)

    CEOの2023~2024年の戦略的なビジネス優先課題のトップ10(上位3項目に挙げられた回答の内容をGartnerが分類)

今回の調査では、回答したCEOの21%がAIを今後3年間で自社の業界に最も大きな影響をおよぼすテクノロジーにあげた。ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのMark Raskino氏は、「ジェネレーティブAIは、ビジネスとオペレーティング・モデルに絶大な影響を及ぼすでしょう。一方、このチャンスを逃すことへの恐怖がテクノロジ市場の強力な原動力となっています。AIは、まだ投資していないCEOが、競争上重要な何かを見逃しているのではと懸念するような転換点を迎えています」と述べている。

また、約半数のCEOは「成長」が戦略的なビジネス優先課題のトップであると回答した。ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのKristin Moyer氏は次のように述べている。「CEOは、ビジネス上の優先課題の判断で思い悩んでいるようですが、立ちすくんではいません。過半数のCEOは、2023年の景気の低迷/後退の程度は浅く、短期的であると考えており、今回の調査では、キャッシュフロー、財務資本、資金調達に関する懸案は小幅な増加にとどまりました」

このような経済的逆風の影響を受けながらも、約半数のCEOは、今後2年間 (2023~2024年) の戦略的なビジネス優先課題のトップに「成長」をあげた。「テクノロジ関連」も引き続きCEOにとっての重点領域であり、これに「ワークフォース (従業員) 」が続く。Raskino氏は「パンデミックを機に景気が不安定になってから3年が経過し、CEOの優先課題は定着しつつあります。幹部リーダーは、危機が世界をあまねく覆うオムニクライシス期の余波の先に目を向け、人材、サステナビリティ、次世代のデジタル変革が競争力の手段となる時代を見据えています」と述べている。

実際、「環境サステナビリティ」に言及した割合は、サステナビリティがCEOの優先課題の上位10項目に初めてランクインした2022年の調査よりもさらに25%多くなった。Gartnerは、2026年までに、CEOの戦略的なビジネス優先課題として環境サステナビリティの順位はテクノロジ関連の順位より高くなると予測している。

また、回答したCEOの22%は、「インフレ」をビジネス上の最大のリスク要因にあげた。また、約4分の1は、2023年に顧客の期待を最も大きく変容させる要因として「価格感度の上昇」を挙げている。一方、CEOの最大のインフレ対応策は依然として「値上げ(回答者の44%)」で、次いで「コスト最適化(36%)」「生産性/効率性/自動化の向上(21%)」となった。

Moyer氏は「インフレ時は生産性に注力する必要がありますが、現在のCEOの注力の程度がまだ低いのが気がかりです。現在の経済情勢においてインフレが長引くことはない、という希望的観測によるものかもしれません。CEOは、コスト上昇分を顧客に転嫁するのではなく、効率化を実現するために、自動化を採用して方法、プロセス、プロダクトを再設計する必要があります」と述べている。

ビジネスにおよぶさまざまなリスクの影響について尋ねると、CEOの26%は組織にとって最大のリスク要因に「人材不足」をあげた。従業員と内定者の行動を最も大きく変容させる要因は報酬を巡る懸念であるとCEOは予測しており、これに次いで、より柔軟な働き方やリモート/ハイブリッド・ワークへの要望があげられている。Raskino氏は「インフレ環境で給与が重視されるのは何ら驚くことではありません。しかし、かつての経済サイクルを考えると、失業は労働市場の力を弱めるのが普通です」と述べている。

また、バイス プレジデント アナリストの藤原恒夫氏は、次のように述べている。「日本の多国籍企業は、盲点となっている地政学的リスクにも早急に取り組む必要があります。CEOの59%が、新たな枠組みのグローバル化、すなわちリグローバリゼーションが今起きていると回答しています。米国、中国、ロシアなどの超大国に囲まれた日本の企業は、今後これらの国の組織とどのように付き合っていくべきか、決断を迫られています」