2020年12月19日23時30分(日本時間)ごろ、TESS衛星とせいめい望遠鏡がそれぞれ、星からの白色光とHα水素線が増大していることを検出し、その後3時間ほど増光が継続する様子を確認した。星で起きたスーパーフレアがその増光の原因だったという。その後、このスーパーフレアは最大級の太陽フレアの7000倍のエネルギー規模であり、極めて大規模なスーパーフレアであることが判明したとする。
このスーパーフレアが起きている間、Hα水素線はドップラーシフトを起こしており、スーパーフレアに伴ってプロミネンス噴出が起きたことが確かめられた。検出されたプロミネンスは毎秒1600kmという超高速で噴出しており、星の脱出速度(秒速350km)を優に超えていた。さらにプロミネンスの質量は、太陽での最大級のものの100倍の大きさである1018(100京)g以上で、史上最大の重量であることも判明したとしている。
プロミネンス噴出は、星から噴出したプラズマが周囲の惑星と相互作用すると、惑星大気の損失を引き起こし、このことはその惑星で生物が存在し得るかどうかを決定する重要な要因の1つとなる。またCMEについては、星がそれにより、どれほどの頻度でどれだけの質量と角運動量を失っているのかを調べることが、恒星が進化の過程でどのように変化していくのかを決める重要な指標になるとする。
特に、今回発見されたプロミネンス噴出は、その速度、質量ともにいまだかつてないほどの大規模な事例だったことから、惑星環境と恒星進化への影響も極めて大きいと推定される。星によってはこれほどにまで大規模なプロミネンス噴出が起きるという前例を作ったという点で、今回の発見は、今後の恒星・惑星科学におけるプロミネンス噴出という現象の立ち位置を大きく変えるものとしている。
研究チームは、今後は可視光のみでなく、X線や電波を観測できる望遠鏡と連携しながら星の同時観測を行うことで、多波長でのプロミネンス噴出とCMEの同時検出を達成し、恒星における大規模なCMEの物理機構の理解を深めることを考えているとしている。