「月」の開発や利用への関心が高まりを見せている。残念ながら失敗してしまったが、ispaceの「HAKUTO-R」では日本初の月面着陸が目前まで迫るなど、その実現に向けた動きは一気に加速しているところだ。そんな中、東京・お台場の日本科学未来館では、4月28日から9月3日まで、月の生活を疑似体験できる特別展「NEO 月でくらす展~宇宙開発は、月面移住の新時代へ!~」が開催されている。今回はその様子を一足早く取材したので、その体験レポートを記したい。

  • 日本科学未来館で開催されている特別展「NEO 月でくらす展 ~宇宙開発は、月面移住の新時代へ!~」を、一足早く体感してきた

    日本科学未来館で開催されている特別展「NEO 月でくらす展 ~宇宙開発は、月面移住の新時代へ!~」を、一足早く体感してきた

日本科学未来館の1階で開かれているNEO 月でくらす展は、2040年の月面基地での生活を想定した展示で、「月面基地ゾーン(基地内)」と「月面ゾーン(基地外)」の2つのゾーンで構成。数々のパネル学習やミッション体験を通じて、月でくらす未来の自分を想像しながら、楽しく宇宙について学べる展覧会である。

月でのくらしを存分に味わえる月面基地ゾーン

月面基地ゾーンには、月でのくらしを体験できる「生活エリア」、月でのくらしの安全を守る任務を支える「管制室エリア」、地質や水資源などを体験しながら学べる「ラボエリア」の3つのエリアがある。

その中でも、注目なのが「隕石回収ミッション―地球のカケラをみつけよう―」。管制室メンバーになりきって月面ローバーを遠隔操作し、地球や宇宙の歴史の謎を解明するための貴重な手がかりである月面隕石を回収するミッションだ。管制室の椅子に座って、ヘッドフォンを装着すると、指令が到着。管制室メンバーの一員として、制限時間以内に隕石を探すミッションが託される。画面上の映像を通して、リアルな月面探査を体感でき、隕石を発見することができると嬉しいものである。その喜びをかみしめながらも、制限時間内は猛スピードで操縦を続ける。獲得した隕石は解説を見ることができ、ミッションの最後には獲得した隕石の数に応じてランクが決まるので、トップランクを目指してミッションに挑んでもらいたい。ちなみに筆者はBランク。絶妙に普通な管制室メンバーという結果だった。

  • 月面の様子はかなりリアルに再現されているそうで、散らばった隕石を回収すると解説がでてくる。どのタイプの隕石を回収できるかは掘り出してからのお楽しみ。

    月面の様子はかなりリアルに再現されているそうで、散らばった隕石を回収すると解説がでてくる。どのタイプの隕石を回収できるかは掘り出してからのお楽しみ。

月面基地内には他にも、月面食堂や月面コンビニなど興味深いエリアが広がっている。月面食堂では月での栽培が見込まれる食材(レタスやトマトなどの野菜や、米、大豆、いも類などの穀物)を使ったレシピが貼ってあり、テーブルにはメニューを模した食品サンプルが並んでいる。また、月面コンビニには、歯磨きグッズや宇宙食など月でくらすための必需品が陳列されていた。なお、このコンビニに並ぶ商品の一部はショップエリアで購入が可能。宇宙用に限定するのがもったいないほどのハイクオリティ商品ばかりのため、買いすぎには注意が必要だ。

  • 身近な食堂と変わらないように見える月面食堂だが、その内容はどれも月での実現が可能なものだという。

    身近な食堂と変わらないように見える月面食堂だが、その内容はどれも月での実現が可能なものだという。

  • 食堂内には、月で生産できる食材を使った料理のサンプルが並ぶ。月の重力下での料理を体験できるフォトスポットもあるので必見。

    食堂内には、月で生産できる食材を使った料理のサンプルが並ぶ。月の重力下での料理を体験できるフォトスポットもあるので必見。

基地外の様子を体験できる月面ゾーン

特別展の奥に広がる、月面ゾーンでは、月から望む美しい地球のすがたや、月の砂「レゴリス」におおわれた月面などが再現されており、月面での時間を身近に感じられる内容になっている。

この月面ゾーンで人気を集めそうなのが、「月面重力体験ミッション」。これは、月の重力を体感できるミッションだ。服の上から専用の服に着替えて、いざ重力体験へ出発。宇宙服を模した衣装は、それに着替えるだけでも月に行った気分になれる本格的なデザインで、大人でも心が躍る。

  • 重力体験へいざ出発!

    重力体験へいざ出発!

体験にあたっては、ハーネスを装着して上部の機械につながれる。すると上に向かって結構な強さで引っ張られ、気を抜くと足が浮いてしまいそうになるため注意が必要だ。

深く屈伸をして、勢いよく上へジャンプ! 地球の約6分の1といわれる月の重力下では、軽くジャンプをしただけでスーパーマンになれたかのように高く飛んでいる感覚になった。高く飛ぶコツはというと、上に向かって垂直に飛ぶことだそう。それはそれは爽快で、ついつい何度もジャンプしたくなるのだが、意外と体力を使うので要注意。それぞれの体力と相談が必要ではあるが、大人も子供も楽しめるミッションだと感じる。

なお、この「月面重力体験」には年齢・身長・体重に制限がある。特に連休中はかなりの混雑が予想されるため、事前に「体験チケット」を購入しておくことをおすすめしたい。

実際の重力体験の様子。軽いジャンプでかなり高くまで飛び上がった。

もう1つ見逃せないのが、「月面探査機撮影ミッション」。その任務は、月着陸実証機「SLIM(スリム)」に乗って実際に月へ行く予定の変形型月面ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」を操縦し、月面探査機を撮影しに行くものである。SORA-Qは、胴体の左右が協調して動く「バタフライ走行」と、別々に動く「クロール走行」の2つの方法で走る。その視界を体感しながら、月面探査機を撮影するべく操縦を開始する。クロール走行は左右で別の操縦を必要としているため、意外と難しくて、頭を使う。何とか探査機を視界に納めたら、自分のお気に入りスポットで写真を撮影してミッション終了。うまくいけば、月面探査機と共に地球や、月面作業員(宇宙服の展示)とを同じ画角に納められる角度があるので、ぜひ探してみてほしい。

月面探査機を撮影するべくSORA-Qを操縦。リモコン自体はスマートフォンなのだが、意外と難しくて必死に操作。

  • 月面探査機を撮影し、探査データを送信すればミッション完了!

    月面探査機を撮影し、探査データを送信すればミッション完了!

他にも、月での水資源調達を体験する「水資源探査ミッション―レゴリスから水をあつめよう―」や、HAKUTO-Rのランダーとローバー実寸大模型など、月面を楽しく体感できるコーナーがたくさんそろっている。

  • 圧倒的な存在感を放つHAKUTO-Rのランダーとローバーの実寸大模型

    圧倒的な存在感を放つHAKUTO-Rのランダーとローバーの実寸大模型

子どもから大人までも誰もがテンションが上がる仕掛けが盛りだくさんな、NEO 月でくらす展。この機会に「月でのくらし」について考え、あと20年足らずで訪れるかもしれない将来の月面生活を、一足早く体験してみてはいかがだろうか。

会期

2023年4月28日(金)~9月3日(日)

開館時間

平日:10:00~15:00(ただし4/28~5/2・7/19~9/1は17:00まで)
土日祝:10:00~17:00
入場は平常時間の30分前まで

会場

日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン

休館日

火曜日(ただし5/2・7/25~8/29の火曜日は開館)

チケット料金

大人(19歳以上):2400円(2100円)
18歳以下(小学生以上):1700円(1400円)
未就学児(4歳以上):1100円(900円)
3歳以下:無料
※括弧内は8人以上の団体料金。価格は税込み。

チケット

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当日券は日本科学未来館 特別展チケット売り場にて販売