新潟大学(新大)は4月26日、匂いに関する認識を受け持つ嗅神経回路の形成において、RNA結合タンパク質「hnRNP A/B」が重要な役割を担うことを、マウスを用いた実験で明らかにしたと発表した。
同成果は、新大 脳研究所(脳研) 動物資源開発研究分野の福田七穂准教授、同・小田佳奈子助教、同・笹岡俊邦教授、脳研 基礎神経科学部門 腫瘍病態学分野の武井延之准教授、新大大学院 医歯学総合研究科 機能制御学分野の福田智行准教授、理化学研究所 脳神経科学研究センターの吉原良浩チームリーダー、東京大学大学院 農学生命科学研究科の東原和成教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、ライフサイエンス全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Cell Reports」に掲載された。
ヒトの遺伝情報は、DNAから転写されたmRNAの情報をもとにさまざまなタンパク質が合成され、それらが適切な場所で働くことで、細胞の活動へと反映される。タンパク質を細胞内に配置する方法は主に2つあり、多くのタンパク質は、転写されたmRNAから速やかに合成された後、適切な場所へと輸送される。
一方で特定のタンパク質は、まずmRNAが目的の場所に運ばれ、そして適切な時期にはじめてその場で合成される。これは「局所翻訳」といわれ、たとえば神経軸索のように核から遠く離れた場所において、迅速かつ限られた場所でタンパク質を発現することを可能にする。このように、局所翻訳は軸索の形成や維持などにおいて重要なことがわかっていたが、その仕組みや生物個体での役割については未解明だったという。
これまで、マウスの精子細胞やグリア細胞などで、局所翻訳の制御を受ける一群のmRNAにhnRNP A/Bが結合することを見出し、その解析を行ってきたのが研究チームだ。その研究の過程で、軸索が活発に伸長する時期の嗅神経細胞において、hnRNP A/Bが多く発現していることが発見されている。そこで今回は、hnRNP A/Bが嗅神経回路の形成過程で重要な働きを担う可能性を考慮し、嗅神経細胞におけるhnRNP A/Bの機能を解析したという。