そこで研究チームは今回、ペルム系最上部の堆積岩を中国の地層から採取し、地層中に含まれる多環式芳香族炭化水素(PAHs)などの超高解像度分析(0.1mm間隔)をFT-ICR-MSにより実施し、火山活動に起因する火災についての調査を行うことにしたとする。
FT-ICR-MSは、2014年に初めて独・ブレーメン大学で地層記録の超高解像度分析に活用され、現在も発展中の分析技術だという。また今回ターゲットとされたPAHsは、地質年代を通じて十億年以上保存される非常に安定的な有機分子だ。PAHsは地球上に普遍的に存在し、自動車や工場の排気ガス、野外のバーベキューなどでも生成され、大気汚染物質中にも含まれている。地球環境中のPAHsの起源は、このように有機物の燃焼現象と密接に関連があるため、地質学的には太古の火災を調べるために活用されており、地層中のPAHsの特徴や量を調べることで、地球の過去の気候変動や環境変化の解明につながるという。
今回検出されたPAHsの分布を調査したところ、当時の火山活動に起因する火災が数百年規模で頻発していたことが判明。さらに、火災によって土壌を安定化させている植生が消滅した結果、陸上土壌の海洋への流出が起こり、土壌に含まれる栄養塩が海洋一次生産性の増大を招き、結果として海洋無酸素化が発生していることが明らかにされた。
研究チームによると、このような一連の環境悪化については先行研究でも報告があったが、今回の研究では初めて、この一連の環境悪化が地質学的に非常に短い時間(数百年規模)で発生していることが確かめられたとする。このことは、超高解像度地層記録の分析が、地質時代の地球生命史事件について、どの程度の時間スケールの環境悪化に起因するものなのかを明らかにするための強力なツールとなりうることが示されているという。
そして研究チームは、地球生命史における大量絶滅事件が地質学的に一瞬なのか、それとも徐々に発生していたのか、それぞれの大量絶滅事件について議論があるが、地層の超高解像度分析の今後の活躍が期待されるとしている。