アルテミスIIミッション

  • 4人が搭乗する巨大ロケット「SLS」と「オリオン」宇宙船

    4人が搭乗する巨大ロケット「SLS」と「オリオン」宇宙船(画像は2022年に行われたアルテミスIミッションのときのもの) (C) NASA/Bill Ingalls

今回選ばれた4人は、これから厳しい訓練を受けることになる。宇宙飛行士だけの訓練にとどまらず、地上からミッションを監視するミッション・コントロール・チームとの共同での訓練も行われる。

一方、4人を打ち上げるロケットや宇宙船の準備も進んでいる。この3月には、SLSロケットのコア・ステージ(第1段機体)の組み立てが完了した。また、SLSの第2段にあたるICPS、そしてSLSの固体ロケット・ブースターはすでにケネディ宇宙センターにあり、組み立てを待っている状態にある。

オリオンのカプセル、欧州が製造するサービス・モージュルも同様に組み立てが進んでいる。

  • アルテミスII用に製造中のオリオン宇宙船のカプセル(2021年撮影)

    アルテミスII用に製造中のオリオン宇宙船のカプセル(2021年撮影) (C) NASA/Kim Shiflett

アルテミスIIの打ち上げは、現時点で2024年11月以降に予定されている。

オリオンはSLSに搭載され、フロリダ州のケネディ宇宙センターの第39B発射施設から離昇する。オリオンとSLSが一緒に打ち上げられるのは、2022年のアルテミスIに次いで2回目であり、宇宙飛行士を乗せて飛行するのは初めてとなる。

SLSからの分離後、オリオンはまず地球を回る軌道に入る。その後、スラスターを数回に分けて噴射し、軌道高度を上げ、「自由帰還軌道」という軌道に乗り移る。この自由帰還軌道は、地球と月を8の字に結ぶように飛行する軌道で、基本的には道中エンジンを噴射しなくても、自然に月でUターンし、地球へ戻ってくることができるという特徴をもつ。このため、たとえば月へ向かう軌道に乗ったあとに宇宙船にトラブルが起きても、漂流してしまう心配がなく安全性が高い。

なお、地球周回軌道を離れて月に向かう前には、オリオンの生命維持装置や通信システム、航法システムの試験なども行い、万が一問題があった場合には月へ向かわず、地球に緊急帰還することになっている。また、SLSの第2段「ICPS (Interim Cryogenic Propulsion Stage)」を月着陸船などに見立て、宇宙飛行士がオリオンを手動で操縦し、ランデブーする試験を行うことになっている。

無事に自由帰還軌道に乗ったあと、オリオンは月に徐々に接近していき、そして月の裏側を通ってUターンする。このとき、月の裏側の地表から約1万0300km離れたところを飛行する予定で、これによりアルテミスIIは、宇宙飛行士が乗った宇宙船として史上最も地球から遠く離れることになる(ちなみに現時点での記録は「アポロ13」ミッションが持っている)。

その後、今度は地球に向かって飛行し、そして大気圏への再突入、パラシュートの展開などをこなしたのち、最終的にカリフォルニア沖の太平洋に着水し、ミッションは完了となる。その後、米海軍の船とNASAのチームによって宇宙飛行士と宇宙船は回収される。

アルテミスIIが無事成功すれば、早ければ2025年後半にも「アルテミスIII」ミッションが行われ、月の南極に2人の宇宙飛行士が降り立つことになる。

アポロ計画が終わってから半世紀。ふたたび人類が月を訪れる日が、刻一刻と近づいている。

  • アルテミスIIのミッション・プロファイル図

    アルテミスIIのミッション・プロファイル図。地球と月を8の字を描くように往復飛行する (C) NASA

参考文献

NASA Names Astronauts to Next Moon Mission, First Crew Under Artemis | NASA
G. Reid Wiseman | NASA
Victor J. Glover | NASA
Christina H. Koch | NASA
Astronaut Jeremy Hansen's biography | Canadian Space Agency