小売業向けのデジタルソリューションを提供するSES-imagotag Japan(エスイーエス・イマゴタグ・ジャパン)は4月6日、日本支社開設と新製品に関する記者発表会を開いた。
コンビニなど6業態で戦略的に事業を展開
フランスのリテールテック企業であるSES-imagotagは、プロモーションコンテンツも表示可能な電子棚札や、カメラ映像をAIで解析して欠品を把握できる「Captana(カプタナ)」、店舗内のエッジデバイスを管理する「VUSION Retail IoT Cloud プラットフォーム」といった製品を62カ国、350超の小売事業者に提供している。
日本国内ではすでに、家電量販店のノジマが全店舗で、イオン九州が展開するマックスバリューでは121店舗中12店舗で同社の電子棚札を導入しているという。
今後、SES-imagotag Japanは小売業の中でもスーパーマーケット、GMS(総合スーパー)、ドラッグストア、コンビニエンスストア、ホームセンター、家電量販店をターゲットにソリューションを提供していく計画だ。
SES-imagotag Japan 代表およびAPAC EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)のパスカル ジェルベール・ガイヤール氏は、「現在、APAC(アジア太平洋)においては台湾、シンガポール、オセアニア地域でも事業を展開しているが、日本は当社ソリューションの導入店舗数が250店舗以上と最も多い。日本は事業戦略上、重要な市場と位置づけている。今後、本格的に進出するうえでは、国内で数万店舗を展開するコンビニエンスストアを重要な領域と捉えている」と説明した。
説明会では詳細な売上目標は明かされなかった。だが、2027年に向けた中期事業戦略「VUSION'27」においてはAPACの売上目標を200万ドルとしており、ガイヤール氏は「その大半が日本市場によるものとなるだろう」と述べた。
同社は今後、クラウド、ネットワーク、システムインテグレーションなど、日本におけるパートナー連携を強化するほか、日本支社の人員拡充を図る。また、認知度向上に向けて、各種セミナー・ウェビナーなどへの参加や、主要な展示会への出展、SNSによる発信などのマーケティングも強化する方針だ。
商品棚向けのマーケティングツール「VUSION Engage」を提供開始
日本市場向けに投入する新製品として、商品棚向けのマーケティングおよびプロモーションツール「VUSION Engage」が説明会では発表された。価格は要問い合わせ。
同製品は、商品棚の棚札の下に設置する横長のデジタルディスプレイ「VUSION Rail」に、ブランディングや商品情報などのコンテンツを遠隔配信できる店頭向けのマーケティング・ソリューションとなる。
小売事業者やブランドは、同製品のクラウドプラットフォーム上で広告映像の自動配信を設定したり、店頭の商品の売れ行きをモニリングしつつキャンペーン内容を調整したりできる。
また、同社は店舗データの収集・分析ソリューションや、広告キャンペーンの配信管理ソリューションも提供しており、それらを組み合わせることで、消費者へのデジタルクーポンの配信とプロモーションキャンペーンの表示、棚札の価格変更などを一体的に行うことが可能だという。
仏SES-Imagotag グループ会長兼CEOのティエリ・ガドゥ氏は、「当社は棚のモニタリング、在庫管理、ピッキング、プライシング、デジタル広告など、店舗のデジタル化を支援するさまざまなプロダクトを提供している。日本の企業にはまず、電子棚札のような設備投資コストが低いソリューションから導入し、デジタル化のメリットを早期に享受してほしい」と語った。
実店舗のデジタル化によって、小売企業は消費者に新しいサービスを提供したり、新たな顧客体験を提供することが可能だ。また、小売業界で働く人材の生産性を向上させ、データ活用によるサプライチェーンの可視化やビジネスモデル高度化も実現できるだろう。
加えて、仏SES-Imagotagは小売業の脱炭素化を目指そうとしている。具体的には、無駄のない店舗運営によって廃棄物削減やペーパーレス化を進め、地元生産者の商品をEコマースのチャネルで消費者に届ける「ローカルeコマース」を浸透させることでエネルギーや資源の無駄を減らしていく考えだ。
米ウォルマートは2022年5月に仏SES-Imagotagとの戦略的な協業拡大を発表した。同社のソリューションの活用を全米で推進し、エネルギー管理ソリューションの活用も開始する予定だという。