50mメッシュで位置・移動・属性を把握する「流動人口データ」を提供
Agoopは2009年にソフトバンクの子会社として創業して以来、携帯端末の位置情報を扱ってきた企業だ。携帯端末の接続性を改善するために基地局の課題解決に取り組んできた知見を生かし、現在は位置情報を活用した人流データの外部販売を行い、自治体や交通機関、大手量販店などのビジネスに貢献している。
Agoop 取締役 兼 CROである若谷巧氏は、位置情報の取り扱いについて次のように語る。
「位置情報はスマートフォンアプリ会社と提携し、取得したログを個人が特定できない形に秘匿化して扱っています。非常に繊細な情報なので、必ずアプリ利用時にポップアップで同意を得たユーザーからのみ取得し、自宅など個人情報に関わる住所とおぼしき場所はAIで自動削除するなどの対応を行っています。なお、削除時は「何丁目付近」といったように、大まかなフラグだけを立て、この地域には何人住んでいると統計データとして集計する工夫もしています」
Agoopはソフトバンクグループ企業ではあるが、外部アプリを通じて情報取得をしているため、他社回線のユーザーの位置情報も含んだ形でビッグデータが形成されているという。若谷氏によると、基地局と携帯端末の距離を電波強度で測って位置情報を取得する方式では250-500m四方を1メッシュとして扱うのが一般的とのことだが、Agoopは50m四方を1メッシュとした狭域での集計データを用意。さらに移動速度や方向も把握できるため、高精度な周遊データを確認できる。
アプリ内アンケートや既存統計情報と組み合わせることで、ユーザーの属性を推測することもできる。ペルソナデータの添えられた具体的な位置情報になることで、活用価値が高くなっているのも特徴だ。
「既存のお客様は自治体や官公庁が多いですね。観光振興やイベント効果測定などや、渋滞状況の分析から都市交通計画の策定、防災計画策定に活用されています。民間では屋外広告の効果測定や、小売店・飲食店の商圏分析などがあります。最近は、金融分野でホテルや商業施設への投資判断に使われることも増えてきました」と若谷氏。
可視化・分析サービスとして、人流データ活用に不慣れでも利用しやすい定形分析ダッシュボード「マチレポ」とカスタマイズ分析のできる「人流統計レポート」を用意。データ提供サービスとしても、指定されたデータから日本全国などの大規模データまで対応し、多くのユーザーに活用されているという。
「小規模でも使いやすい」を目指し「Snowflakeマーケットプレイス」に参加
「これまでのお客様は、人流データを活用できるだけのリソースを持つ官公庁や大企業が中心でした。ただ、規模は小さくても先進的な取り組みをしたいという中小企業やベンチャー企業からも問い合わせはたくさんいただいていました。残念ながら、人流データは性質上単価が高いこともあり、利用を促進できていないという課題は持っていました」と、若谷氏は語る。
コロナ禍による消費行動の変化は、観光業や小売業をはじめ多くの業界に影響を及ぼしている。景気回復や事業拡大を目指す企業において、人流データは貢献できるはずだ。しかし現実は、コスト面がハードルとなって小規模な活用や実験的な利用が難しい。
そうした状況を解消するため、Agoopでは人流データの活用をどうしたら広げられるのかを検討していたという。そのための一歩として選択されたのが、スノーフレイクが提供する「Snowflakeマーケットプレイス」とのデータ連携だ。「Snowflakeマーケットプレイス」では、自社のデータを販売できる。
「人流データはどの程度小分けにすると利活用が進むのかを研究していたところでした。想定するユーザーは中小規模でも先進的な取り組みをしたい企業が多いだろうということ、利活用を促進できるようなソリューションも整っていることから、より多くのお客様に当社のデータを使ってもらうためのパートナーとしてスノーフレイクが最適だと考えました」と若谷氏は話す。
「Snowflakeマーケットプレイス」では、サンプルデータとして狭域集計データの1つである東京都新宿区付近の約1時間分のデータを無償提供。ユーザーは実際にどれほど細かい情報が得られるのか、どんな利用ができそうなのかについて、実データと自社データを組み合わせた分析で試せる仕組みだ。有償で希望地域のデータも購入できる。
「提供を開始して1カ月弱ですが、すでに4社ほどのアクセスを確認しており、データ結合する動きが見えています。興味を持って試してくれる企業がすぐ出てきたこと、試してみてもらえたことは、狙い通りだと感じています」と、Agoop 取締役 兼 CTOの加藤有祐氏は手応えを語った。
データ提供側の手順も手軽でシンプル
若谷氏は、「Snowflakeマーケットプレイス」におけるサービス提供の今後の方向性について、次のように話す。
「国などが提供しているデータは500mメッシュです。それと比較すると50mメッシュは100倍の情報があるので、情報量が多すぎて扱いが難しい部分があるかもしれないとは考えています。その辺りはデータを使っていただいている方とコミュニケーションを取りながら改善していきたいですね。自社で使うのはもちろん、これまで使われていない業界でもどう活用を進めていくのかなどについてもディスカッションしていきたいです」
無料で小規模な実データを試せるのはユーザー側にとって大きなメリットだが、「Snowflakeマーケットプレイス」との連携はAgoop側でも新規ユーザー開拓以上のメリットがあるという。
「実は、以前から外部との連携やデータ提供は何度も検討してきました。しかし提供プロセスや規約の問題、手続きなど、さまざまな面で課題が出ては諦めることを繰り返していたのです。しかし、Snowflakeマーケットプレイスは、データを出す側の手続きも簡単でシンプルでした。当社独自のデータ利用にあたっての利用規約も適用できますし、データの登録公開も2日程度で完了しました」と加藤氏。
プラットフォームに合わせて規約を変更するのではなく、データ提供側もカスタマイズしながら手軽に参加できることで、以前からの課題が解決されたわけだ。
「スノーフレイクのアーキテクチャもデータ分析する上で素晴らしいものです。さらにSnowflakeマーケットプレイスはデータ共有が簡単にできます。誰でも簡単にマッシュアップできる場所がある。この2つがそろうことで、簡単に分析でき、簡単にデータをかけ算できる。こうした環境はなかなかありません。データ共有時にコピーを作るような手間がかからないのも本当にいいですね」と、加藤氏は力強く語った。