2021年4月に設立されたKINTOテクノロジーズは、トヨタ自動車が全世界で手掛ける販売・金融事業(トヨタファイナンシャルサービス株式会社の管掌領域)を中心として、トヨタグループのDtoC(Direct to Consumer)ビジネス推進をテクノロジー面からサポートしている。
KINTOテクノロジーズに在籍する社員は約300人。同社には、幅広い職種のエンジニアが全員中途入社で在籍。社員の国籍も15カ国以上と、「多様性」がキーワードといえる。多様なエンジニアを抱える同社は、 組織運営において、大きな課題を2つ抱えていた。そこで取締役副社長の景山均氏に、組織課題をいかに解決したのか、また今後描く未来についてインタビューした。
さまざまな職種のエンジニアの「頑張り」を取りこぼさないために
KINTOテクノロジーズの特徴の一つが、前述したように職種・経歴ともに多彩なエンジニアを自社で抱えている点だ。景山氏は、同社における「エンジニアの内製化」について、次のように語る。
「トヨタグループは2018年に『モビリティカンパニー』への転換を発表し、多くの変革を行ってきました。その一つが、エンジニアを内製化した別会社として弊社を設立したことです。弊社は『BtoCビジネス向けシステム』を開発していますが、BtoCシステムの開発で最も重要になるのは、『顧客の声を聞き、サービスやシステムを頻繁に改修する』ということです。そのため、内製組織でクイックに対応できることが、大きな強みになると考えていました。よって、QA(Quality Assurance)エンジニアやデータサイエンティストなど、さまざまな事象にスピーディーに対応できる数多くの職種の社員に入社いただきました。また、インフラは自分たちで構築していますし、生産性を高めるために開発環境を整備する役割も存在します。その他、デザイナーやWebディレクターなど、本当に幅広い職種の人材がいます」(景山氏)
このように顧客の声にいち早く対応するためにエンジニアを内製化しているKINTOテクノロジーズだが、組織運営には大きな問題が2つあったという。
1つ目は、幅広いプロダクト開発案件があり標準化に課題があったこと。上述したように、同社には、フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニア・デザイナーなど複数職種が同一組織に在籍しているほか、案件ごと・職種ごとに開発の進め方が異なっていたため、プロジェクトの可視化に課題があったという。
2つ目は、開発案件増加に伴いエンジニア数が急激に増加したこと。人数が急増したため、マネジメント工数が逼迫し、エンジニアの負荷を把握することが物理的に困難な状況になってしまっていたそうだ。
「多くのエンジニアが在籍している中で『本当に頑張っている人を評価する』ということは、評価するマネージャー・評価されるメンバーどちらの視点でも、非常に重要かつ難しい課題です。元々は、1on1ミーティングを実施し、メンバーから業務状況や進捗を直接聞いていたのですが、自分の頑張りをアピールするのにも得手不得手がありますし、マネージャーにも負荷が多くかかっていました。そのため、このままでは優秀な人材の離職につながってしまうと考えていました」(景山氏)
こうした背景から、同社は、そのような多様なエンジニアたちが業務で最大限のパフォーマンスを発揮できるように「エンジニアのワークロード(生産性・業務負荷)を可視化する」べく、Findyが提供している「Findy Team+」を導入した。「Findy Team+」は、エンジニア組織の生産性を可視化することで、パフォーマンス改善をはかるアナリティクスツールだ。
「Findy Team+」を導入した決め手は、「GitHubと連携し、パフォーマンスを可視化できるため、エンジニアマネジメントに適していること」「レポートが整っており見やすく、直感的に操作出来ること」「類似・競合となるプロダクトが無いこと」だったという。2022年7月に「Findy Team+」をトライアル導入し、一定の成果があったことから、2022年9月より本格導入を決めたという。
「見える化」から「数値化」へ
ここまで導入について伺ってきたが、実際にFindy Team+の利用を開始してから、どのような効果を感じているのだろうか。
「マネージャーが、データをもとにメンバーと1on1で対話を実施できるようになりました。数字で業務状況を確認できるため、勘違いや思い込みがなくなり、業務の進捗について正確なヒアリングやアドバイスを実施することを習慣化することができるようになりました。また社員ひとりひとりが数字を見て『もっと頑張らなければ』と思えたり、チーム全体の進捗度合いを見てバランスを図ったり、マネージャー・メンバー・チームという3つ全ての方向でプラスに働いていると思います」(景山氏)
またデータをもとにしたPDCAの習慣化および改善活動も行っているという。月に1回、Findyのカスタマーサクセス担当と部門マネージャーで導入後ミーティングを実施し、データのアドバイスをもらいながら、振り返りと課題設定を実施しているのだそうだ。
複数チームを比較することで、問題のあるチームの発見すること、また目標値を設定しPDCAを回すことができるようになるという。また、高負荷となっている期間の作業内容を確認し、プロジェクトメンバーで改善策を検討することで、次回以降の業務に「人を増やす」「違う職種のエンジニアも参加させる」など具体的な対応策を考えられるようになったという効果もあるという。
最後に、景山氏に今後の展望を聞いた。
「今後の課題は『見える化』から『数値化』していくことです。今は組織の拡大がフォーカスされがちですが、今後は、事業サイドのマネジメントから効率的な組織かどうかが問われるようになってくるでしょう。そのため、数値化したものを事業サイドのマネジメントにもしっかりフィードバックして、日々生産性を高めているのだということを見せていきたいと思っています。無駄な作業・無駄な時間を減らすとよく言いますが、『無駄なのかどうか見極める』こともすごく大切なことです。会社からしたら無駄な作業だったとしても、それが個人にとってはなくてはならないプロセスだったということはよくある話です。そんな生産性を高めていく議論をそれぞれの観点からをどんどんしていきたいです。そして、まず生産性を高めるために、優秀なエンジニアが楽しく働ける環境を作りたいと思っています。優秀な人であっても何もしなければ優秀でなくなっていきます。優秀なエンジニアが最大限のパフォーマンスを発揮できる組織作りが最大の目標になってくると思います。幅広い職種で中途採用も積極的に行っていますので、優秀なエンジニア・クリエイターにはぜひ仲間になっていただきたいですね」(景山氏)