新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は3月22日、グリーンイノベーション基金事業の一環として、「バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」の研究開発・事業化に着手し、この開発を担当する企業を採択したことを発表した。
グリーンイノベーション基金事業は、日本政府が2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする目標「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことから、これを実現する研究開発・事業化を推進する事業として、総額2兆円の予算で進めている事業だ。NEDOは、この研究開発・事業化の具体的な事業企画内容を設計し、具体的にその事業を担当する企業や研究機関を公募して、研究開発と事業化を当該企業や大学などに委託する事業を実施している。
今回、NEDOは研究開発項目1「有用微生物の開発を加速する微生物等改変プラットフォーム技術の高度化」、研究開発項目2「CO2を原料に物質生産できる微生物等の開発・改良」、研究開発項目3「CO2を原料に物質生産できる微生物等による製造技術等の開発・実証」の3テーマの事業化を担当する研究開発機関や企業などを公募し、それぞれの事業を担当する企業や公的研究機関などを採択した(実際には、この3テーマを同時に担当する企業も多数あり、複雑な担当内容になっている模様だ)。
当該事業全体の事業規模は、2023年度から2030年度(原則)までの8年間で全体が2530億円規模だが、実際の支援規模は約1767億円(この差額は事業を担当する企業が負担する、あるいは事業内容に応じたインセンティブなどになると推定)となり、基本は委託事業では9/10を、助成事業では2/3、あるいは1/2の事業資金をNEDOが提供する計画だ。
今回は、研究開発項目1から3までの担当企業はかなり複雑な事業担当の構成になっている。まず、研究開発項目1の中の「CO2固定微生物活用プラットフォームの構築」は製品評価技術基盤機構(NITE)、東京大学、茨城大学、京都大学、海洋研究開発機構、情報・システム研究機構の国立遺伝学研究所ならびにデータサイエンス共同利用基盤施設 ライフサイエンス統合データベースセンター、bitBiome(東京都新宿区)、研究開発項目3の「CO2を原料に物質生産できる微生物の製造技術などの開発・実証」は富士フイルム、研究開発項目の2と3の「バイオものづくり技術によるCO2を原料とした高付加価値化学品の製品化」は、積水化学工業と地球環境産業技術研究機構、研究開発項目の2と3の「水素細菌によるCO2とH2を原料とする革新的ものづくり技術の開発」は双日、電力中央研究所、Green Earth Institute(東京都新宿区)、DIC、ダイセル、東レ、研究開発項目の1と2と3の「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」をカネカ、日揮ホールディングス、バッカス・バイオイノベーション(神戸市)、島津製作所、研究開発項目の1と2と3の「光合成によるCO2直接利用を基盤とした日本発グローバル産業構築」をちとせ研究所がそれぞれ担当する。
今回は、研究開発項目の1、2、3をそれぞれ担当する大学や企業が複雑になっているため、研究開発の進展具合いによって研究成果・事業化の評価委員会を開催し、徐々に整理を進めていく模様だ。研究開発・事業化が進展する過程で、ステージゲート方式(評価委員会)によって、担当企業を整理する計画だからだ。
2023年3月30日訂正:記事初出時、製品評価技術基盤機構の略称をNITOと誤って記載しておりましたが、正しくはNITEとなりますので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。