ファーストスターの単独、あるいは複数の超新星爆発で汚染された場合の元素組成パターンの理論予測を教師データとして、およそ450もの超金属欠乏星の元素組成データを対象とし、機械学習による分類が行われた。その結果、それらの星々のおよそ68%は、複数のファーストスターから放出された元素による汚染によって説明できることが示されたとする。この成果は、ファーストスターが複数同時にまとめて生まれたかどうかという「マルチプリシティ」について、初めての定量的な制限となるとしている。

  • 低金属量星の炭素と鉄の組成。色は、今回の機械学習アルゴリズムによって計算された「単一の超新星によって汚染された可能性」を示す(赤は単一、青は複数)。破線(炭素と鉄の比([C/Fe] = 0.7)より上の星は炭素過剰金属欠乏星と呼ばれ、単一の超新星によって汚染された可能性が高い。(c)Hartwig et al.

    低金属量星の炭素と鉄の組成。色は、今回の機械学習アルゴリズムによって計算された「単一の超新星によって汚染された可能性」を示す(赤は単一、青は複数)。破線(炭素と鉄の比([C/Fe] = 0.7)より上の星は炭素過剰金属欠乏星と呼ばれ、単一の超新星によって汚染された可能性が高い。(c)Hartwig et al.(出所:Kavli IPMU Webサイト)

研究チームによると、このファーストスターのマルチプリシティは、数値計算では予測されていたが、観測的に検証する方法はこれまでなかったという。そして今回の研究成果は、ファーストスターが小さな星団で生まれ、その複数の超新星爆発が初期の星間空間の化学進化に影響していることを示唆するものとした。

また研究チームは、今回開発したアルゴリズムにより、今後さらに大容量化が予想される天文データを解析するための新たな手法が得られたとする。なお、AIによる天文データの解析は近年世界的に活発化しているが、銀河考古学に応用されたのは今回が初めてだとする。

これまでの形成理論によると、ファーストスターは太陽の十数倍も重い星であることが予測されており、そのような星は太陽の百万倍も重いガス雲の中で誕生したものと考えられてきた。ところが今回の解析により、ファーストスターは単独ではなく、ほかの星々とともに星団を形成していたか、連星系を形成していたことがわかってきた。このことから研究チームは、ファーストスターが近接連星系だった場合は、ビッグバン直後の重力波源が今後の衛星や月面での観測で捉えられるかもしれないとしている。