国立極地研究所(極地研)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、神奈川大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、分子科学研究所(分子研)、大阪大学(阪大)、名古屋大学(名大)の7者は3月22日、C型(炭素質)小惑星リュウグウから採取された粒子の組織や組成を詳しく調べてその形成過程を明らかにし、炭素質コンドライトの一種であり、「イブナ型」ともいわれる「CI型炭素質コンドライト」(以下「CI型隕石」)に分類される隕石に似ている一方で、ナトリウムに富む物質が存在するなど、重要な違いがあることも発見したと共同で発表した。

また、リュウグウ粒子の詳細な組織観察から、母天体が形成された直後、何回も水の関与した地質活動(水質変成)があったこと、それに加えて、天体の衝突による破砕と混合を受けていたことも併せて発表された。

  • (上)今回の研究で着目された4つの粒子の1つであるリュウグウ粒子「A0037」の研磨片の走査電子顕微鏡像。(下)同化学組成像。赤:粘土鉱物(含水層状ケイ酸塩鉱物)、緑:炭酸塩鉱物、青:磁鉄鉱、黄:硫化鉱物

    (上)今回の研究で着目された4つの粒子の1つであるリュウグウ粒子「A0037」の研磨片の走査電子顕微鏡像。(下)同化学組成像。赤:粘土鉱物(含水層状ケイ酸塩鉱物)、緑:炭酸塩鉱物、青:磁鉄鉱、黄:硫化鉱物(出所:神奈川大プレスリリースPDF)

同成果は、極地研の山口亮准教授を中心とする、30名以上の国内外の研究者が参加した国際共同研究チーム「Phase-2キュレーション高知チーム」によるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

地球上で回収された隕石は、地球の大気中の水や空気によって風化や汚染が進むため、母天体にあった時の記録の一部は失われており、これまでの隕石のみの研究では、C型小惑星の形成過程を読み解くには大きな制約があったという。そこで研究チームは今回、地球での風化や汚染の影響を最小限に抑えた上で、リュウグウ粒子を詳細に分析することにしたという。

まず、今回の研究で着目された4つの粒子が、CI型隕石に似ていること、また地球上でもよく見られる粘土鉱物(含水層状ケイ酸塩鉱物)や炭酸塩鉱物を多く含み、それらの鉱物の形成には水が大きく関与していたことが明らかにされた。なお、この結果は、研究チームによるこれまでの同位体学研究やほかの研究チームの報告と調和的としている。

その一方で、リュウグウ粒子からは、CI型隕石に特徴的な石膏などの鉱物は見つからず、同隕石では未発見のナトリウムに富む層やある種のリン酸塩鉱物などが複数発見された。このような違いは、地球上での風化の有無のために生じた可能性があるという。

続いて、詳細な組織観察から、小惑星リュウグウの母天体は、複数回の液体の水が関与する地質活動(水質変成)や、天体の衝突による破砕と混合(角レキ化)を経験していることが判明。鉱物の化学組成やその組み合わせから、水質変成は、およそ0℃~150℃の比較的低温な環境で起こったことも明らかになった。