キヤノンは3月20日、ロボットアームなどの産業機器に搭載することで、ものを動かす際の荷重や回転させる力の大きさ・方向を測定し、人の手のような感覚を持たせることができる力覚センサの新製品「FH-300-20」を、2023年4月中旬に発売することを発表した。
人手不足解消を目指しキヤノンが力覚センサ市場に参入
人手不足などの課題が顕在化する生産現場では、自動化に対するニーズが高まっている。その一方で、ギア(歯車)の微細な歯を噛み合わせることでギア同士をはめ込むなど、細かい調整が必要で繊細な作業は、以前人手に頼っているのが現状だ。
力覚センサは、ロボットアームに取り付けることで、ものを取り扱う際にアームにかかる力を数値化し、対象を取り扱う強さなどの感覚を持たせることができる機器である。
今回キヤノンは、長年培われた光学式エンコーダ技術を活用し、同社初となる力覚センサ製品を開発。すでに広く力覚センサが用いられる生産現場のロボットに加え、介護現場での実用化が目指される介助ロボットなどにも適用範囲をを広げ、人手不足解消に貢献する狙いだという。
光学式エンコーダの採用で薄型化・軽量化を実現
新製品では、光学式エンコーダを同一の電気基板上に複数搭載することで、センサ本体の薄型化(厚さ約20mm)や軽量化(約250g)とともに、ノイズの低減も実現している。これにより微小な動きを検出することが可能になり、微細な力加減が必要な作業にも適用できるとする。
また、独自のアルゴリズムを採用することで高速応答性を備え、ロボットアームのシステムによる計測要求に約300μsで応答するとのこと。そのため、高速な制御や繊細なはめ込み作業への貢献が可能になるという。
なお同センサは、水や異物侵入の保護等級企画「IP65」(防塵性能6級・防水性能5級)を保持しており、粉塵の内部への侵入や、全方向からの水の直接噴流による有害な影響を防ぐことができるため、さまざまな使用環境に対応可能だとしている。
「第6回次世代介護テクノロジー展」で搭載機器を展示予定
キヤノンの担当者によると、新製品FH-300-20は主に7kg~12kg程度の小型~中型ロボットでの使用が想定され、同程度の性能を持つ力覚センサと比較した場合、薄さや軽さについては世界でもトップクラスにあたるとする。また、製品の外径は一般的なサイズのロボットアームに適用可能な88mmだという。
同製品はオープン価格で発売されるというが、20万円程度での販売を想定しているとのこと。この価格帯は、同程度の力覚センサに対しても比較的安価だとしている。
なお新製品に関しては、2023年3月22日から24日まで東京ビッグサイトで開催される「Careテクノロジー東京 '23」内の「第6回次世代介護テクノロジー展」にて、同製品を搭載した「ウェルビーイング増幅マッサージシステム」が、青山学院大学のブースで展示されるとのことだ。