凸版印刷と情報通信研究機構(NICT)は3月14日、NICTが運用するテストベッド「保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システムH-LINCOS」において、PQC対応のプライベート認証局を構築し、電子署名・電子証明書発行機能の追加と凸版印刷とNICTが開発した「PQC CARD」との連携を通した改ざん検知機能を実装し、その有効性の検証に成功したことを発表した。
H-LINCOSにおいては、「PQC CARD」を用いた電子カルテデータへのアクセス制御をする際、「PQC CARD」に格納された電子証明書を検証することで、正しい権限を持った本人であるかを確認している。今回、その電子証明書をPQC対応のプライベート認証局が「CRYSTALS-Dilithium」と呼ばれるPQCの電子署名アルゴリズムを用いて発行するという機能を構築した。
また、PQC対応のプライベート認証局で電子証明書を発行し「PQC CARD」に格納するという一連の機能を構築することで、H-LINCOSをより実際の運用場面に即したテストベッドへとアップデートした。この「PQC CARD」を用いて、H-LINCOSにおけるICカード認証と電子カルテデータへのアクセス制御を検証し、問題なく動作することを確認したという。
両者は、プライベート認証局をはじめ関連する技術を活用し、2025年に「量子セキュアクラウド技術」の限定的な実用化を、2030年に本格的な提供開始を目指す方針。また、インターネットのセキュリティを担保する基盤技術として、ヘルスケア・金融・行政などにおける個人情報管理をはじめ、電子メールやSNS、オンラインショッピング、IoT関連システム、コネクテッドカーなど広範囲なサービスへのPQCの適用・拡大を目指すとしている。
両者の役割として、凸版印刷は、ISARAとの連携を通じたPQC対応プライベート認証局のH-LINCOSへの実装、「PQC CARD」とPQC対応プライベート認証局のシステム間連携・開発を担う。NICTは、この開発の全体構成、詳細仕様の策定、テストベッドである「H-LINCOS」環境の提供を行う。