東京・上野の国立科学博物館(科博)にて2023年3月14日から6月18日までの期間、特別展「恐竜博2023」が開催される。

  • 恐竜博2023
  • 恐竜博2023の音声ガイド
  • 東京・上野の国立科学博物館(科博)にて2023年3月14日より開催される「恐竜博2023」。音声ガイドは賀来賢人氏が担当する

貴重な鎧竜ズールから学ぶ恐竜の身の守り方

同展は、「攻・守」をキーワードに、胴体に板状・トゲ状の突起や鎧を進化させた装盾類(剣竜類・鎧竜類)と、そうした防御を突き抜ける武器(歯や爪)を進化させた肉食恐竜を対比させ、その進化を読み解こうというもの。会場は「第1章 装盾類の進化」、「第2章 鎧竜ズールのすべて」、「第3章 北半球における獣脚類の進化」、「第4章 南半球における獣脚類の進化」、「第5章 絶滅の最新研究」の5章構成となっており、最大の見どころはカナダ・ロイヤルオンタリオ博物館所蔵で、カナダ以外の国では初めての公開となる鎧竜ズール・クルリヴァスタトルの実物の化石。世界でも珍しい頭からこん棒(尾)まで残されている鎧竜の化石で、開幕に際し、挨拶に登壇したロイヤルオンタリオ博物館のマリア・ピアチェンテ展示部門 副館長も「貸し出すことが心配なくらいの全体の保存具合であるが、こうしたすばらしい標本を多くの人に見てもらう重要性も踏まえ、貸し出しを決定した」と説明するほど。監修を務めた国立科学博物館の真鍋真 副館長も、「鎧竜を含めた草食恐竜の進化についての研究は近年、進歩してきた。ズールはその中で教科書的な役割を担う存在。決定的な“守る”、防御の進化を見ることができる」と、同展でのズールの役割と、その標本的価値の高さを説明する。

  • 鎧竜ズール・クルリヴァスタトルの頭骨化石
  • 鎧竜ズール・クルリヴァスタトルの頭骨化石
  • 鎧竜ズール・クルリヴァスタトルの頭骨化石の実物。頭骨以外の部分も別の場所で見ることができる。360°全方向から見れるように胴体と別に展示することとなった (所蔵:ロイヤルオンタリオ博物館)

ちなみにズールは、映画ゴーストバスターズに出てくる「門の神 ズール」に顔が似ていることから、ハリウッドのプロダクションを通じて学名として名付けられたという。

  • 鎧竜ズール・クルリヴァスタトルの体骨格と尾の化石の実物

    鎧竜ズール・クルリヴァスタトルの体骨格と尾の化石の実物 (所蔵:ロイヤルオンタリオ博物館)

会場では、このズールのライバルであったと考えられるゴルゴサウルスがズールに襲い掛かろうとする様子を再現した2体の全身復元骨格も見ることができる。

  • ズールに襲い掛かるゴルゴサウルス

    ズールに襲い掛かるゴルゴサウルス。クルリヴァスタトルは、「脛の破壊者」という意味。ズールの尾のこん棒はゴルゴサウルスの脛くらいの高さにあり、実際に脛を骨折したゴルゴサウルスの化石も発見されていることもあり名付けられた。2022年の論文では、ズール同士で、こん棒を脇腹にぶつけあっていた可能性も指摘されている (所蔵:ロイヤルオンタリオ博物館)@ズールに襲い掛かるゴルゴサウルス

  • ゴルゴサウルスの頭骨の実物

    ゴルゴサウルスの頭骨の実物 (所蔵:ロイヤルオンタリオ博物館)

  • 真鍋氏らが発見したケラトプス科の未記載種
  • 真鍋氏らが発見したケラトプス科の未記載種
  • 真鍋氏らが発見したケラトプス科の未記載種も実物の化石と全身復元骨格も展示されている。2023年2月に新種の可能性があるとする論文を提出したばかりだが、もしかすると会期中にも新種として認定される可能性もあるという (所蔵:国立科学博物館)

草食恐竜を狙う肉食恐竜、世界初公開の全身骨格

守る草食恐竜に対し、攻める肉食恐竜の北半球の代表格として、1991年にカナダで発見され、これまでに発見されている中でも最重量と目されるティラノサウルス「スコッティ」の全身復元骨格と、177個の実物化石が見つかっている世界初公開となるティラノサウルス「タイソン」の全身組立骨格を見ることができる。特に、タイソンは、右の上腕骨にほかのティラノサウルスに後方から噛みつかれた痕跡を見ることができる(タイソンは研究中のものとなるため、骨格は鉄製のフレームにはめ込む形で構成されており、研究のたびに外せるような仕組みを採用しているという)。

  • 世界初公開となるティラノサウルス「タイソン」の全身組立骨格

    世界初公開となるティラノサウルス「タイソン」の全身組立骨格 (所蔵:タイソン ティラノサウルスレックス合同会社)

  • ティラノサウルス「スコッティ」の全身復元骨格

    ティラノサウルス「スコッティ」の全身復元骨格 (C)Courtesy of The Royal Saskatchewan Museum

また、南半球の攻める肉食恐竜の代表格としては、2022年にメガラプトル類の新種として認定された「マイプ・マクロソラックス」のホロタイプ標本も展示される。マイプは、国立科学博物館なども参加した発掘作業が新型コロナの感染拡大の影響で中断されており、真鍋氏も、新型コロナの収束後、ふたたび発掘地であるアルゼンチンに赴き、作業を再開したいという意欲を見せている。そのため、より多くのマイプの化石を発掘し、その後、全身復元をしたいという思惑から、今回の展示会では全身の復元は行わなかったという。

  • 「マイプ・マクロソラックス」のホロタイプ標本

    2022年にメガラプトル類の新種として認定されたばかりの「マイプ・マクロソラックス」のホロタイプ標本 (所蔵:パドレ・モーリナ博物館)

特設ショップ「まなべるショップ Dino Navi」がオープン

これまでの展示会の多くは、特設ショップのスペースの前段が第2会場として用意されてきた(2019年開催の「恐竜博2019」では、岩石から化石を取り出すプロパレータという仕事を実際に見ることができた)が、今回は第2会場という役割を特設ショップに持たせる形での仕様に変更。さまざまな関連グッズを通じて、新たな恐竜の魅力を発見できる「まなべるショップDino Navi」と銘打って、恐竜に関するさまざまなグッズやコンテンツが紹介されている。

  • まなべるショップDino Navi」
  • まなべるショップDino Navi」
  • 同展は第2会場はなく、すべてが「まなべるショップDino Navi」となる

その中には、1972年の学研の図鑑から、2022年の学研の図鑑LIVEまで、恐竜の姿の変遷を見ることができるコーナーや、真鍋氏から見た「ゴジラ」と恐竜の違いを説明するコーナーなどもある。

  • 公式図録
  • 学研の図鑑
  • 展示会お約束の公式図録に関する裏話コーナーも用意されているほか、学研の図鑑による恐竜復元画の変遷なども見ることができる

また、コラボ企画のグッズも多数用意されており、上述のゴジラとのコラボグッズや科博の特別展のお約束であるカプセルフィギュアのほか、タカラトミーが手掛けるメカ生命体「ゾイド(ZOIDS)」のアンキロックスとギルラプターの限定商品、ビックリマンなど数々のキャラクターデザインを手掛けるグリーンハウスがデザインしたズールとマイプのぬいぐるみ(入荷が遅れているため、しばらくは予約申し込みのみ)なども販売されている。このほか、国宝絵巻「鳥獣人物戯画」から着想を得た「恐竜人物戯画」のオリジナルグッズも販売されている。

  • 恐竜博2023オフィシャルカプセルフィギュア
  • 恐竜博2023オフィシャルカプセルフィギュア
  • おなじみ海洋堂が手掛ける恐竜博2023オフィシャルカプセルフィギュアが今回も設置

  • 恐竜博2023仕様のゾイド2種類が発売

    恐竜博2023仕様のゾイド2種類が発売

  • 恐竜博2023オリジナルぬいぐるみ

    恐竜博2023オリジナルぬいぐるみは、2023年3月13日時点では予約販売となっていた

なお、同特別展の東京会場での概要は以下のとおり。東京会場での展示終了後は、7月7日~9月24日の予定で大阪市立自然史博物館にて開催される予定。

  • 会場:国立科学博物館(東京・上野)
  • 会期:2023年3月14日~6月18日
  • 開館時間:9時~17時(土曜ならびに4月30日~5月7日は19時まで。入場は各閉館時刻の30分前まで。常設展示は17時閉館(入場は16時30分まで)、4月29日~5月7日は18時閉館(入場は17時30分まで))
  • 休館日:月曜日。ただし3月27日、4月3日、5月1日、6月12日は開館
  • 入場料:一般・大学生2200円、小中高校生600円(公式チケットサイト、アソビュー!、各種プレイガイドにて購入可能)
  • 入場には、オンラインによる(未就学児など無料対象者も含めた)日時指定予約が必要(各種プレイガイドでのチケット購入の場合、来場時に購入したコンビニ店頭で発行した紙チケットと日時指定予約のQRチケットが必要なことに注意)

2023年3月17日11時50分訂正:記事初出時に、東京会場での概要における入場に関する注意事項の項目に関しまして、「来常時」と表記しておりましたが、正しくは「来場時」となりますので、当該箇所を修正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。