東京・上野の国立科学博物館(科博)にて2019年7月13日から10月14日までの期間、特別展「恐竜博2019」が開催される。

  • 恐竜博 2019

    特別展会場入り口の設置されている「恐竜博 2019」の看板

1969年、ジョン・オストロム教授が1964年に発見した小型肉食恐竜「デイノニクス("怖ろしい鉤爪"という意味)」の研究成果を発表。それまで考えられていた恐竜は愚鈍な生き物、というイメージから恐竜の存在を一転させる「恐竜ルネサンス」が発生した。それから50年、今回の特別展は、そうした現代につながる恐竜研究50周年を記念して開催されるもので、開会にあたり科博の林良博 館長は「かつて地球上で繁栄した恐竜は6600万年前に隕石の衝突により大量絶滅を迎えたが、現在の地球も、1900年から2014年までの114年の間に哺乳類35種、鳥類57種が絶滅するなど、第6回目の大量絶滅期に突入していると考えられている。そうしたことを踏まえ、約600万年前に起こった第5回目の大量絶滅期を知ることが、地球の現在、そしてこれからを考える展示会になれば、と思っている」と、開催に際しての思いを語っている。

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    開会式で行われたテープカットの様子。左から朝日新聞社の代表取締役社長である渡辺雅隆氏、国立科学博物館長の林良博氏、駐日モンゴル国特命全権大使のダンバダルジャー・バッチジャルガル氏、文化庁の宮田亮平 長官、むかわ町の竹中喜之 町長、NHKの上田良一 会長、NHKプロモーションの代表取締役社長である風谷英隆氏

恐竜博2019では、多くの骨格標本が展示される。例えば、入り口をくぐった瞬間に、監修者で、科博標本資料センター・コレクションディレクターの真鍋真氏が、「ホロタイプ標本は普通は貸し出されないもの。おそらく今後2度と日本に来ないと思う」と評するほどの価値のあるオストロム教授が研究に利用したデイノニクスのホロタイプ標本(完模式標本。学名の参照基準となる一個体の標本)が出迎えてくれる。

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    特別展の入り口を入ってすぐに待ち構えている恐竜ルネサンスのきっかけとなったデイノニクスのホロタイプ標本

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    植物食恐竜のテノントサウルスに襲いかかる2体のデイノニクスの様子を再現した複製

また、モンゴルのゴビ砂漠で1965年に前あしが発見され、恐ろしい手という意味からつけられたものの、ほかの部分が見つからず、謎の恐竜とされてきた「デイノケイルス」については、近年、2体の化石が見つかったことを受け作られた全身復元骨格が世界で初めて公開される。さらに、また、日本でも近年、各地で恐竜の化石が見つかっているが、中でも全身骨格の8割以上がそろってみつかった大型恐竜「むかわ竜」の全身実物化石と全身復元骨格が今回、むかわ竜の発見地である北海道のむかわ町以外で初めて展示される(全身復元骨格は世界初公開)。

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    世界初公開となるデイノケイルスの全身復元骨格。その全長は11mで、体重は6tと推定されている

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    デイノケイルスの全身復元骨格をしたから覗き込んだ様子。その大きさが窺い知れる

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    デイノケイルスに向かい合う形で配置されているアジアのティラノとも呼ばれ、ゴビ砂漠を代表する大型獣脚類「タルボサウルス」の複製標本

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    デイノケイルスに向かい合うタルボサウルス。ぱっと見、デイノケイルスがタルボサウルスに襲いかかるような構図にも見えなくはないが、おそらくはタルボサウルスがデイノケイルスを注視しているのに対し、デイノケイルスはタルボサウルスに気づかず食べ物である植物に注意が向いているといった構図をイメージしたものと思われる

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  • 世界初公開となるむかわ竜の全身復元骨格と、むかわ町外で初めての公開となる全身実物化石

展示エリアは大きく分けて、Chapter1の「恐竜ルネサンス」から始まり、Chapter2の「ベールを脱いだ謎の恐竜」、Chapter3「最新研究からみえてきた恐竜の一生」、Chapter4「『むかわ竜』の世界」、Chapter5「絶滅の境界を歩いて渡る」、そしてエピローグの「これからの恐竜額」という構成となっているほか、第2会場では岩石から化石を取り出すプロパレータという仕事を実際に見ることができる。

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  • 和歌山県で発見された日本でもっとも"完成度"の高いとされるモササウルス類の実物全身骨格化石や、今も昔も大人気恐竜であるティラノサウルスの全身復元骨格なども展示されている。ちなみにこのティラノサウルスは発見時にスコッチウィスキーで祝ったことから、「スコッティ」と呼ばれている標本の複製で、2019年4月に、史上最重量のティラノサウルスかつ肉食恐竜としても最重量の存在であることが報告された(推定8870kg)

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    恐竜博2019には音声ガイドが用意されている(貸出料金550円/台)。パーソナリティは構成作家の鈴木おさむ氏だが、同展監修の真鍋真氏や学術協力の小林快次氏(北海道大学総合博物館 教授)などが最新の研究成果などを説明してくれる部分がメインとなっており、各展示物の仔細な部分なども理解できるため、同展を訪れた際は借りることをお勧めする

また、第2会場を過ぎると科博の特別展ではおなじみのグッズショップ「恐竜博ショップ」が出迎えてくれる。恐竜博2019オリジナルグッズとして、鳥獣人物戯画から着想を得た「恐竜人物戯画」や、すみっコぐらしやうまい棒とコラボしたグッズなどが売られているほか、こちらもおなじみの海洋堂によるオフィシャルカプセルフィギュアのカプセルトイ(全5種)も設置されている。

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  • 第1会場と第2会場をつなぐ通路には、おなじみの記念撮影スポットも設置されているが、今回はARにも対応。マーカーをもって、スマホでARサイトにアクセスすると、自分の腕がデイノケイルスの前あしに早変わりする

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  • 第2会場のメイン展示? 化石クリーニングラボ。米国で腕を磨き、現在は北京大学所属のプレパレータとして活躍する佐藤哲哉氏が化石クリーニングの実演を行っている

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  • 鳥獣人物戯画から着想を得た「恐竜人物戯画」が、さまざまなグッズとして販売されている

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  • すみっコぐらしとのコラボグッズも販売

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  • うまい棒とのコラボ商品「うまいボーン」。味はサラミ味

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  • 会場限定のぬいぐるみも販売されている

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  • ショップの出口付近に設置されているカプセルトイは恐竜博2019オフィシャルカプセルフィギュア入り。カプセルの中には5種類の恐竜フィギュアのいずれかが入っている

ちなみに、会場内は基本的には撮影OKだが、フラッシュ撮影や一脚・三脚、自撮り棒の使用およびビデオ撮影は禁止のほか、一部撮影禁止の展示物ならびに映像があることに注意する必要がある。

なお、同特別展の概要は以下のとおりとなっている。

  • 入場料(当日券):一般・大学生1600円、小中高校生600円(未就学児ならびに障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料)。金曜・土曜限定のペア得ナイトチケット(2名1組2000円、当日の17時以降に発売)も用意。相互割引として、東京国立博物館の特別展「三国志」、国立西洋美術館の松方コレクション展、東京藝術大学大学美術館の「円山応挙から近代京都画壇へ」のいずれかの展覧会の当日券または前売り券(使用済み半券可)を持っている場合は、科博の特別展券売所で提示して当日券を購入すると、1枚につき1名に限り、一般・大学生が1550円に、小中学生が550円(ほかの割引との併用不可)で購入が可能
  • 会期:2019年7月13日~10月14日
  • 開館時間:9時~17時(金曜・土曜は20時まで。入場は各閉館時刻の30分前まで)。8月11日~15日および18日は18時まで開館 会場:国立科学博物館(東京・上野)
  • 休館日:7月16日、9月2日、9月9日、9月17日、9月24日、9月30日