量子科学技術研究開発機構(量研機構)と東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)の2者は2月21日、国際核融合実験炉「ITER(イーター)」の主要機器の1つであり、プラズマを閉じ込めるための超伝導電磁石「トロイダル磁場(TF)コイル」の製作において、東芝ESSが担当する4基が完成し、日本が分担する全8基の製作が完了したことを共同で発表した。

  • ITERのTFコイル

    ITERのTFコイル(出所:東芝プレスリリースPDF)

国際核融合実験炉のITERは、同実験炉の建設・運転を通じて核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証することを目的とした計画。トカマク型で、重水素-三重水素反応による核融合を目指しており、出力は500MWが設計値とされている。同実験路は、日本を含む、世界7極(日・欧・米・露・韓・中・印)35か国の国際協力により、フランス南部のサン・ポール・レ・デュランスにおいて建設が進められている。

核融合を生じさせるためには、数億℃もの超高温プラズマを閉じ込める必要があり、そのための重要な機器がTFコイルだ。同機器は高さ16.5m・幅9mの大きさで、最大11.8テスラもの高磁場を発生させることができる。ITERにはTFコイルが全18基組み込まれる計画で、日本が8基+スペア1基、欧州が10基を分担して製作する計画だ。つまりTFコイルについては、日本1国でほぼ半分を担当しているのである。

TFコイルは巻線部と構造物をそれぞれ個別に製作して、それらを一体化することで完成となる。その製造には、大きく2つの技術的課題があったという。

まず1つ目が、高い磁場精度を実現する必要があるため、高さ16.5m・幅9mの大きさにもかかわらず、電流中心線の位置精度をわずか数mmという正確さで実現しなければならない点だ。そのためには、巻線部と構造物を高精度で組み合わせる必要があるが、両者は個別に製造されるため、それぞれに製作誤差が生じている。それを考慮しつつ、最適な位置で巻線部と構造物を組み合わせるのは容易ではない。

具体的な組み合わせ作業としては、まず直線部の構造物に巻線部を設置して、次に曲線部の構造物を設置。その後、構造物蓋を取り付けることで、巻線部が構造物内に格納される。今回は、巨大構造物の電流中心線の位置公差を満たすため、0.01mmオーダーの精度を有する光学的計測装置が導入され、作業中の巻線部と構造物の形状をリアルタイムで計測。必要に応じてこれらを矯正できる手法を確立することで、巻線部と構造物を高精度で組み合わせることに成功したという。その結果、巻線部と構造物を合わせた後の電流中心線の位置は、TFコイル全4基ともに所定の公差を満足することができたとした。