Malwarebytesは2月17日(米国時間)、「Two Supreme Court cases could change the Internet as we know it」において、米国の最高裁判所で審議が進められている、大手IT企業を取り巻く2つの訴訟について取り上げた。
GoogleとTwitterを被告とした訴訟であり、いずれも被告が提供するプラットフォームに投稿されたコンテンツがテロに絡んでいた場合、プラットフォームの提供者が責任を負うべきか否かを争点としている。原告が勝訴した場合、インターネットに投稿されるコンテンツに対して、プラットフォームの提供者がこれまで以上に強い責任を負うことになる。
米国には、通称「セクション230」と呼ばれる法律がある。これは1996年に成立した通信品位法(CDA: The Communications Decency Act)第230条のことで、要約すると「インターネットサービスプロバイダー企業は、第三者によって提供されたコンテンツに対して一部の例外を除いて法的責任を追わない」というもの。法的責任はあくまでもコンテンツを提供した本人にあるということを明確にする法律であり、インターネット上の言論の自由の根幹を支える法律とされてきた。
問題になっている訴訟の一つは、2015年にパリで発生したISISによるテロ攻撃の被害者であるNohemi Gonzalez氏の家族が、Googleに対して起こしたもの(Gonzalez対Google訴訟)。ISISがYouTubeでメンバーの勧誘につながる動画を掲載していたのに対し、Googleがその動画の投稿を許容し、アルゴリズムを通じて視聴者に提供していたことが、反テロリズム法(ATA: Anti Terrorism Act)に違反するという訴えである。本来であれば、Googleはセクション230で保護される。しかし最高裁判所は、Googleの対策がセクション230の保護を受けるには不十分だったという原告の主張に対し、改めて審議に入ることに同意した。
もう一つの訴訟は、2017年にイスタンブールで発生したISISによるテロ攻撃の被害者Nawras Alassaf氏の親族が、Twitterに対して起こしたもの(Taamneh対Twitter訴訟)。この訴訟では、ISISがTwitterの提供するプラットフォームを利用したことをもって、セクション230とは無関係にTwitterがテロ幇助の責任を負うかどうかが争点となっている。原告は、TwitterがISISのが投稿したコンテンツを適切に排除しなかったことがテロ幇助にあたると主張しており、Twitterは「テロリストのアカウントをブロックしないことが実質的にテロの支援になる」と知っていた場合のみ責任を負うと反論している。
この2つの裁判の結果は、セクション230の適用範囲を明確にすることにつながる。そして場合によっては、セクション230によって保護される範囲が現在よりも大幅に狭まる可能性もある。もしそうなった場合、プラットフォームの提供事業者は訴訟リスクを回避するために投稿内容に対する規制を強めることになるだろう。