東京工業大学(東工大)は1月31日、ペンギンの旋回遊泳を水族館で多数の水中ビデオカメラを用いて撮影した動画から、運動と流体力を解析し、ペンギンが翼を羽ばたかせて旋回する遊泳メカニズムを明らかにしたと発表した。

  • 羽ばたいて右旋回するジェンツーペンギン(撮影:長崎ペンギン水族館)

    羽ばたいて右旋回するジェンツーペンギン(撮影:長崎ペンギン水族館)(出所:東工大プレスリリースPDF)

同成果は、東工大 工学院機械系の原田夏輝大学院生(研究当時)、同・田中博人准教授らの研究チームによるもの。詳細は、生物学的組織の全レベルにおいて生物の形態と機能に関する全般を扱う学術誌「Journal of Experimental Biology」に掲載された。

ペンギンは、飛行能力を捨てた代わりに優れた水中遊泳能力を獲得した鳥類だ。水中において翼をはためかせ、飛ぶようにして素速く泳ぐことが知られている。

研究チームはこれまで、ペンギンが水中を直進する際に翼をどのように動かして流体力を生み出すのかという推進メカニズムについて解析済みだ。しかし、旋回のような複雑な機動遊泳のメカニズムは依然として未解明だったことから、今回、水平面内の羽ばたき旋回時の遊泳メカニズムの解明を目指すことにしたという。

旋回遊泳の撮影は、直進時の研究と同様に、長崎ペンギン水族館にて2018年と2019年に実施された。研究チームは、運動解析用マーカーを付けた3個体のジェンツーペンギンの羽ばたき遊泳の様子を、水中ビデオカメラ12台もしくは14台によって記録。それを用いて3次元運動解析が行われ、さらにその運動データに基づいた翼と体の流体力が計算された。

解析された羽ばたきの回数は、水平旋回が14羽ばたき、水平直進が40羽ばたきだったという。今回の旋回の対象は、旋回半径が平均1.0mで、ペンギンの遊泳の中では比較的緩やかなものである。解析の際には、右旋回は反転させ、すべて左旋回として扱うことにしたとする。

ペンギンの羽ばたきサイクルは、必ず腹側から背中側への「打ち上げ」から始まり、その動作の終わりから間もなくして背中側から腹側への「打ち下ろし」が始まる。体の水平面に対する姿勢角度は、航空機力学に準じて、体方位角・仰角・バンク角で表された。また体の回転運動は、クルマと同様に、背腹軸周りのヨー・左右軸周りのピッチ・体軸(前後軸)周りのロールで表された。加えて、ペンギンの速度の方位角は速度方位角とされた。

  • ペンギンの水平面に対する姿勢角(A)と軌跡(B)を表した図

    ペンギンの水平面に対する姿勢角(A)と軌跡(B)を表した図(出所:東工大プレスリリースPDF)