同研究ではまず、CO2を捉える役割を持つZrO2表面の□サイトの濃度が求められた。炭素の安定同位体13Cで標識した13CO2の光還元反応試験の後、真空にして12CO2を入れることで、□サイトに吸着した13CO2が脱離する様子を観察。その脱離する速度は非常に遅く、□サイトの濃度は1nm四方あたり0.96個と求められたとした。

次に、□サイトに吸着したCO2がどのように反応するか、シミュレーションを用いた分析を行い、光触媒やCO2に含まれる電子のエネルギーや分布についての式を解いたという。その結果、CO2はまず□サイト上に捉えられ、次に水素(H)原子と反応してOCOHとなり、四角形状に変形。さらに、□サイトに水酸基(OH)が入り込むと同時にCOが生成され、このCOがZrO2表面の□サイトから近くのニッケルに移ることで、メチン、メチルを経てメタンが生成されることが判明した。

触媒として進むためには、上述した反応サイクルが繰り返されることが条件となる。そしてO原子がH2Oとして抜けるには、本来は5.6eV(エレクトロンボルト)のエネルギーが必要だが、ZrO2の□サイトにCO2が吸着すると3.9eVの熱が出るため、実質1.7eVを与えるだけでH2Oが抜け、□サイトが再生されることが確認され、このことがポイントとなっていた(なお、TiO2、ZnO、CuxO(x=1,2)では1.7eVよりも大きなエネルギー供給が必要)。つまり、ZrO2のみでCO2光燃料化が進む鍵は、この3.9eVのエネルギー供給により□サイトが再生されることにあったのである。

  • ZrO<sub>2</sub>とNiを複合させた光触媒でCO<sub>2</sub>からメタンへと光燃料化される推定反応経路

    ZrO2とNiを複合させた光触媒でCO2からメタンへと光燃料化される推定反応経路(出所:千葉大プレスリリースPDF)

研究チームは、今回解明された反応経路や有効なサイトの情報を基に、さらに有効なCO2光燃料化、あるいはCO2光資源化(光エチレンや光プロピレン)反応設計が可能になり、再生可能社会への実用化が期待できるとした。