CESの新領域として、2022年注目されていた「スペーステック」がある。今年のCES 2023では、スペーステックに関わる日本の超小型衛星が2機、展示会の会期中に宇宙空間に放出され稼働を開始した。1機はソニーの「EYE」であり、もう一機はアークエッジ・スペース(ArkEdge Space)の「Optimal-1」である。この2機の衛星がCES展示会場に出展され、さらにはこれら超小型人工衛星の推進エンジンとなるPale Blueの「水エンジン」もスタートアップが集まるVenetian Expo会場に出展された。

ソニーのプレスカンファレンスで報告された「EYE」が打ち上げに成功

ソニーのSTAR SPHEREプロジェクトによる初めての超小型人工衛星「EYE」が、CES 2023メディアカンファレンス初日にあたる1月3日(米国東部時間)に、スペースXのFalcon 9で打ち上げられ、無事、衛星軌道上に放出された。1月4日夕方のLas Vegas会場で開催されたソニーのプレスカンファレンスの冒頭にて、吉田社長から衛星が順調に機能していることが報告されると会場から拍手が起こった。

このEYEの模型と搭載したカメラを使って宇宙空間からの撮影を行うデモが、ソニーの展示ブースに設けられ、展示のひとつの目玉として参観客の注目を浴びていた(図1)。

  • ソニーの超小型衛星「EYE」

    図1 ソニーの超小型衛星「EYE」。Tech EastのCentral Hall会場で「EYE」の展示と宇宙空間からの撮影を行うシミュレーションデモが行われた (筆者撮影)

ソニーのSTAR SPHEREプロジェクトは、東京大学(東大)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに推進している。衛星の設計・製造、運用には東京大学中須賀研究室およびアークエッジ・スペースが加わっている。さらに、超小型衛星に推進力を持たせるために、Pale Blueの「水エンジン」を搭載している。 

ISSからアークエッジ・スペースの「Optimal-1」が放出

アークエッジ・スペースとして2機目となる超小型人工衛星「Optimal-1」も、CES 2023期間中の1月6日に国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」モジュールから若田宇宙飛行士によって宇宙空間に放出された。

このOptimal-1は、今回の放出に先立つ2022年11月に、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースXのFalcon 9ロケットで打ち上げられたドラゴン宇宙船によってISSへ輸送されたものである。

CES 2023では、Tech EastのNorth Hallにアークエッジ・スペースが2台の超小型人工衛星を展示した。1台は6U衛星と呼ぶ大きさが10cm×20cm×30cmのもの、もう1台は今回、宇宙に放出されたOptimal-1と同型機であり、大きさが10cm×10cm×30cmの3U衛星と呼ぶものである(図2)。これらの衛星には推進用エンジンとして、Pale Blueの水エンジンが搭載されている。

Optimal-1は、超小型推進系、通信装置および軌道上高度情報処理技術などの実証実験を行うことをミッションとしており、展示の場では説明員より最初の試験である双方向通信が順調に確認された旨の説明があった。今後は、さまざまな顧客のニーズを搭載した超小型人工衛星を、低コストで大量に送り出すことを目指している。

  • Tech East, North Hall会場のTripod Design社のブースに展示されたアークエッジ・スペースの超小型衛星

    図2 Tech East, North Hall会場のTripod Design社のブースに展示されたアークエッジ・スペースの超小型衛星。左側が6U衛星と呼ぶ10cm×20cm×30cmサイズのもの。右側が今回宇宙空間に放出されたOptimal-1と同型機で10cm×10cm×30cmサイズ (筆者撮影)

超小型人工衛星を支えるPale Blueの水エンジン

Pale Blueは、超小型人工衛星に搭載している水エンジンを、CESのTech West Venetian会場に展示した(図3)。ソニーのEYEとアークエッジ・スペースのOptimal-1に搭載され、超小型衛星の推進力を担う重要な機能である。水を推進剤として使用するため、安全かつ低価格であり、今後増加する超小型人工衛星のニーズにも対応していけるサステナブルな技術である。

  • CES 2023のTech West Venetian会場のJETROブースに展示されたPale Blueの「水エンジン」

    図3 CES 2023のTech West Venetian会場のJETROブースに展示されたPale Blueの「水エンジン」。左側が水蒸気を噴出するタイプで今回のOptimal-1に搭載されている。中央はイオンを放出するハイブリッドタイプ、右側は水蒸気噴出型で、超小型衛星への適用を想定しサイズを極限までコンパクトにしたもの。推進剤となる水は200mlで3年程度の運用が可能との説明であった (筆者撮影)

昨年のCES 2022ではスペーステックが1つのキーワードであったが、スペースXなどの民間企業の進出で大型のロケットが頻繁に打ち上がるようになり、商業化も進んで宇宙に行くことが当たり前のようになったこともあって、早くも今年のCESではスペーステックという言葉は聞かなくなってしまった。一方で、今年は、日本が得意とする超小型衛星が今後続々と宇宙空間に送り出されていくことを期待させる内容であった。さまざまな機能を搭載した超小型衛星が飛び回ることによって新たな発見や宇宙空間の新たな活用のアイデアが生まれてくる事を大いに期待したい。