サービスプラットフォームとしての可能性を秘める「SMAPS」

昨今、企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、ペーパーレスへの関心が高まっている。NTTタウンページがリンクスとの提携とSMAPSの自社提供に踏み切った背景には、3年前に舵を切ったデジタルマーケティングへの事業シフトにある。

「広告事業のデジタル化が進んでおり、われわれも自分達のドメインである広告事業をデジタルに向かって広げています」と、井上氏は話す。

職業別電話帳であるタウンページは企業データとしても提供されており、カーナビなどに導入事例が多数ある。中小企業向けには、デジタルマーケティングサービス「デジタルリード」の提供も開始しており、企業のデジタル化を支援するメニューがそろう。今回のリンクスとの提携は、企業の消費者向けオペレーションのデジタル化にフィットしたという。

今後、SMAPSの開発は引き続きリンクスが行うが、NTTタウンページは市場をよく知る立場から市場の声をフィードバックして製品改善に役立ててもらう。また、「決済代行との連携、IVR(自動音声応答)との連携なども進めていきたい」と、井上氏は話す。

決済代行との連携により、それまでは紙ベースだった支払いがスマートフォンで完結する。また、IVRと連携すれば、次のようなことも可能になる。コールセンターでオペレーターが電話を取れない場合にガイダンスを流すタイミングで電話番号をもらってSMSを返す。その時に、折り返しの電話をかける時間を選んでもらう予約ボタンを用意すれば、ユーザーの利便性が高まる。

「SMAPSは他のサービスとつなぐことで利用シーンが広がり、価値が高まる」と井上氏。その他、デジタルギフトなどとの連携も可能という。

夏山氏も、「SMAPSはプラットフォームといえます。企業では必ず売上代金の回収業務が発生しますが、SMAPSを使えば請求書や明細の送付、同意を得る、決済と一気通貫で行えます」と説明する。

携帯電話番号はIDになりうる、広がるSMSの可能性

実のところ、SMS自体は新しい機能ではない。だが、ここにきてSMSがビジネス用途で利用する機運が高まっている。SMSの可能性を信じて10年以上前にSMAPSを設計し、開発責任者を務めてきたリンクスの夏山氏は、「ナンバーポータビリティやキャリア間での送受信が可能になったことにより、SMSの利用の幅広がりました」と話す。

井上氏も、「ナンバーポータビリティが導入されてから、携帯電話の番号変更は1%以下」と話す。「携帯電話は契約時に身分証明書の提示が必要です、つまり、本人性が確認済のIDという認識ができます」と井上氏が話せば、夏山氏も「これまで顧客データは住所や固定電話の番号など、変わる可能性があるものをユーザーIDとしていましたが、携帯電話番号をIDにすることで企業資産としてずっと活用することが可能になります」と述べる。

「近年、DXがブームですが、大きな変革を進める前に、すぐにデジタル化できることはたくさんあります」と井上氏。「SMSを使う企業はここ数年で急増していますが、送信での利用にとどまっています。それではもったいない。SMSは他のソリューションとつなげることで新たな価値を生み出すメディアなので、NTTタウンページとリンクスがその活用を広げていきたい」と、同氏は力強く語っていた。