東日本電信電話(以下、NTT東日本)は11月7日、第179回NTT東日本N響コンサートにおいて、東京オペラシティとドルトン東京学園を低遅延通信技術でつなぎ、両会場での演奏と観客の反応を低遅延かつ双方向で配信する企画を実施した。

昨今の音楽業界では、音楽コンサートのオンライン配信が増加しているが、通信や音声と映像の合成により遅延が発生し、一つの音楽として成立しづらい課題があるという。

このような課題に対して、NTTグループではIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の主要技術であるAPN(All Photonics Network)によって、映像や音声などを低遅延に伝送する技術に加え、それらを低遅延に表示する技術を活用した実証コンサートを実施した。

コンサートの実施に先立ち、NTT東日本グループの中でICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)と文化芸術分野の融合に特化したNTT ArtTechnologyが記者会見を開き、同社の代表取締役社長である国枝学氏が説明を行った。

  • NTT ArtTechnology 代表取締役社長 国枝学氏

    NTT ArtTechnology 代表取締役社長 国枝学氏

NTT ArtTechnologyが注目しているのは、地域の文化財をデジタル化してネットワークを介して情報を伝送する「分散型デジタルミュージアム構想」だ。同構想は、時間や場所の制約をデジタル技術によって取り払い、さまざまな場所や環境で文化財や美術品を鑑賞することを可能にするもの。

  • 分散型デジタルミュージアムの概要図

    分散型デジタルミュージアムの概要

一方で、音楽を題材に遠隔地同士をつなぐ場合、どうしても遅延が発生してしまうためにライブパフォーマンスは難しかったそうだ。これに対して、NTTグループがIOWN構想の主要技術として開発しているAPNを活用したライブを考案したという。

  • IOWN構想の概要図

    IOWN構想の概要

同社は2022年3月に、Bunkamuraオーチャードホール(東京都 渋谷区)とNTTインターコミュニケーション・センター(略称:ICC 東京都 新宿区)をネットワークでつなぎ、サテライトコンサートを実施した。

コンサートでは、両会場に1台ずつピアノを設置し遠隔で二重奏を披露した。その他、出演者の一部のメンバーがICCで演奏し、指揮の確認なども含めて遠隔地から映像や音を確認しながら参加したそうだ。オーチャードホールでは、両会場の音と映像を合わせて鑑賞することができた。

コンサートの終了後にアンケート調査を実施したところ、演者および観客のどちらからも高い評価が得られたとのことだ。

  • 2022年3月の演奏の様子

    2022年3月の演奏の様子

今回はこのコンサートの結果を踏まえながら、東京都 新宿区にある東京オペラシティと東京都 調布市に位置するドルトン東京学園を低遅延通信技術でつなぎ、演奏者と観客が約10キロメートルの距離を超えて一つのコンサートを作り上げるとのことだ。前回のコンサートとは異なり、今回は両会場に観客が入る。

演奏するのは『ラデツキー行進曲』だ。曲を聞けば誰もが知っているであろうこちらの行進曲だが、両会場で演者が演奏するだけでなく、観客の手拍子の映像や音を双方向に送ることで、一体感の作り出せるかということにも挑戦する。

  • 2022年11月のコンサートで活用する低遅延通信技術

    2022年11月のコンサートで活用する低遅延通信技術

今回のコンサートの重要な鍵となるAPN関連技術は、「低遅延伝送技術」と「低遅延映像処理技術」の2つ。低遅延伝送技術では、ルータやレイヤ2スイッチなど電気処理を主体とする通信装置を無くして、レイヤ1通信パスをエンド・ツー・エンドで設定する。また、低遅延映像処理技術では各拠点の映像を1画面に分割表示する処理を10ミリ秒以下で実現するとのことだ。

  • コンサートで用いられる2つの技術

    コンサートで用いられる2つの技術

  • 20ミリ秒以下の低遅延を目指す

    20ミリ秒以下の低遅延を目指す

今後の展望として、二地点間だけではなく、多地点間での協奏も目指すという。加えて、映像と音を低遅延に伝送する今回の技術を活用して、e-sportsなど他分野への応用も見据えている。