慶應義塾大学(慶大)は1月16日、ビールの苦味成分である熟成ホップ由来苦味酸の単回摂取が、注意力を必要とする認知機能検査中の自律神経活動を調節し、注意力を向上させる機能があることを、健常成人を対象としたランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較の臨床試験で確認したと発表した。

同成果は、慶大 文学部心理学研究室の梅田聡教授、キリンホールディングス R&D本部キリン中央研究所らの共同研究チームによるもの。詳細は、健康食品や生理活性食品成分に関する全般を扱う学術誌「Journal of Functional Foods」に掲載された。

近年の疫学調査では、少量の酒類の摂取は脳の健康に良い作用があるという報告がなされている。また、香りと苦味を付与するためビール醸造で伝統的に使用されている薬用ハーブのホップは、さまざまな健康効果を持つ植物として古くから知られている。

そうした中、キリングループによるこれまでの研究では、ホップに含まれる「イソα酸」や、ホップを加熱熟成することで生じる熟成ホップ由来苦味酸には、アルツハイマー病予防や、加齢に伴う認知機能低下の抑制、うつ様行動抑制の効果があることが非臨床試験で確認されていた。

さらに、二重盲検ランダム化比較試験において、熟成ホップ由来苦味酸を含むサプリメントを6週間もしくは12週間摂取することによって、健康な中高齢男女の記憶力や注意力、気分状態が改善されることも報告していた。

しかし、ヒトにおける熟成ホップ由来苦味酸のメカニズムについては、これまで検証がなされていなかったことから、研究チームは今回の調査を開始したという。