名古屋工業大学(名工大)は1月13日、超高耐圧SiCパワー半導体の性能を決定する物性値「キャリア寿命」の測定を、高品質な4H-SiC結晶に対して独自開発の装置を用いて実施した結果、高い励起キャリア濃度では従来の値よりもキャリア寿命が長いことを明らかにしたと発表した。

同成果は、名工大大学院 工学研究科の加藤正史准教授、同・電気・機械工学専攻の田中和裕大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、日本の応用物理学会が刊行する応用物理学に関する全般を扱う欧文学術誌「Japanese Journal of Applied Physics」に掲載された。

普及が進むSiCパワー半導体は、従来のパワー半導体ではなし得なかった10kV以上の電圧に耐える素子の実現も可能であるとされ、将来の電力システムへの応用が期待されている。ただし10kVを超えるためには、SiCパワー半導体を、電子のみのユニポーラ構造ではなく、電子と正孔を電気伝導に用いる「バイポーラ構造」で作製しなければ電力損失が大きくなってしまうという。

こうしたバイポーラ構造の素子の性能はキャリア寿命が決定することが知られており、これまでもSiCでの測定は行われてきたが、バイポーラ構造での限界性能を決める高い励起キャリア濃度における同値については知見が少なく、特に高品質な4H-SiC結晶を用いて、高い励起キャリア濃度でのキャリア寿命を観測した例はなかったという。

そこで研究チームは今回、独自に開発した装置を用いて、高品質な4H-SiC結晶のキャリア寿命を、高い励起キャリア濃度において観測することにしたとする。