分析には、厚生労働省および文部科学省が実施している21世紀出生児縦断調査の2001年コホートが用いられた。分析対象は、2001年に生まれた日本全国の1万8510人の子どもがいる世帯。「おむつを取り換える」や「入浴させる」など、父親の育児への関わりの程度を最も少ない群から多い群まで4群に分けて、それぞれの群における16歳時点での子どものメンタルヘルスの状況の比較が行われた。

その結果、最も関わりが多い群は、最も少ない群と比較して、メンタルヘルスの不調のリスクが10%ほど下がっていることが確認されたという。今回の研究結果から、乳児期における父親の育児への関わりが多いことが、長期的に子どものメンタルヘルスの不調を予防する可能性が示唆されたと研究チームでは説明している。

  • 16歳時点での子どものメンタルヘルスの不調リスク

    16歳時点での子どものメンタルヘルスの不調リスク。最も少ない群を1.0としたとき、最も多い群は0.9で、10%ほど下がっていることが確認された (出所:NCCHD Webサイト)

日本の社会は、父親が外で働き、子育ては母親が行うといった考え方が根強い時代が長かったが、近年は、イクメンという言葉も登場し、父親の育児休業取得推進の義務化など、父親が積極的に育児に関わることが推奨される社会になりつつある(ただし、育児休業を取得しておきながら、実際には育児に参加せずにただ本人が休んでいるだけの父親も見受けられる点も、母親側などからの問題点として提起されている)。

今回の研究から得られた知見は、そういった日本社会の変化が子どもの成長にとって好ましい影響をもたらす可能性を示唆していると研究チームでは説明している。なお、今回用いられたデータは2001年時点での父親の育児への関わりであることから、今後より新しいデータを用いて検証する必要があるともしている。