社会の変化に合わせ、顧客ニーズや消費行動は日々、変化し続けている。企業側はニーズを把握し、顧客の要望に応えるためにさまざまな努力をしている。そのプロセスでデータを活用することで、よりスムーズな顧客理解につなげているのが、大手消費財化学メーカーの花王だ。
11月10日、11日に開催された「TECH+ EXPO 2022 Winter for データ活用 戦略的な意思決定を導く」に同社 DX戦略推進センター カスタマーサクセス部 部長でモールビジネス推進室 室長の鈴木直樹氏が登壇。「ゼロ次分析×ゼロパーティデータ=無限大の価値」と題して講演を行った。
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カスタマージャーニー全体の可視化に向けて
「人をよく理解し期待の先いく企業に」をビジョンに掲げる花王。冒頭で鈴木氏は同社でも、複雑化が進む現在において、潜在化しているニーズをしっかりと把握することはますます困難となってきているという実情を明かした。
「ちょっとしたペインポイントや小さなため息、つまり人々のあきらめのようなところにどう向き合っていくかが大事になってきています」(鈴木氏)
これまでも花王では、購買/SNS/口コミデータの分析は行っていたものの、購買に至る前の過程である興味・検討と紐づくようなデータは持っていなかったことから、購買までのカスタマージャーニーの全体像が見えていなかった。また、変化の激しい市場をアジャイルに理解することが難しくなっていると同氏は説明する。
そうした課題を受けて花王では、生活者のストーリー全体を連続的なデータで把握する「線」によるアプローチが重要になると判断した。
「デジタル時代における顧客理解には、データ収集・可視化と合わせて“個”の行動を徹底解明するというアプローチが求められます。そのため当社では、連続性と行動ファクト、モーメント、因果・因子、予兆・予測という側面からのデータ活用へと注力するようにしました」(鈴木氏)
顧客を理解するための手法としては、従来から、アンケートなどによるリサーチやコールセンターへの問い合わせといったものがある。これらに加えて同社では、Web/ソーシャル分析による話題・評判確認、そして現在とりわけ重点を置いている愛用者・推奨者の声を活かした価値共創という、より“攻め”の手法を取り入れるようにした。「売上やWebアクセス、コールセンター、アンケート、市場データ、SNS投稿などそれぞれのフィールドを深掘りしていきつつ、それらを包括的に分析していくというアプローチを取っています」と鈴木氏は説明する。
ここで同氏は一例として、花王におけるWeb行動分析の取り組みを紹介した。最近の化粧品業界で話題になっている「メンズメイク」や、「出産祝い」といったキーワードで行ったというWeb行動分析からは、検索行動データから生活者の潜在欲求が見えてくることが伺えた。