放射光を用いたリアルタイム光電子分光測定が実際に行われた結果、この予想が正しいことが実証されたほか、生じた反応しやすい欠陥において、O2が分子のまま吸着することが見出されたという。その後、O2はO原子に解離し、Si-O-Si結合を形成。このような分子状吸着を介する反応経路は、エネルギーを必要としないとすることから、平均運動エネルギーの低いO2ガスによる酸化に関する矛盾は起こらず、実験事実を自然に説明できたと研究チームでは説明している。

  • 成長の様子

    SiO2/Si界面欠陥でO2が反応し、SiO2膜が成長する様子 (出所:JASRI Webサイト)

また、今回の研究成果による酸化モデルでは、たとえばこれまでは不明だったp型Siとn型Siで酸化速度が異なる理由を説明できるなど、さまざまな応用が期待されるとのことで、今後のCMOSの設計や製造プロセスにおいて、不可欠な基盤技術の確立につながるとしているほか、欠陥でO2が反応することが示されたことから、欠陥を消滅させながらSiO2を成長させることが可能であることも示唆されたとしている。これは、欠陥の少ない良好なゲート絶縁膜が実現され、デバイスの高性能化につながることを意味するという。

  • 反応過程の模式図

    SiO2/Si界面におけるO2の反応過程の模式図 (出所:JASRI Webサイト)

また近年のトランジスタでは、酸化ハフニウム(HfO2)のような、SiO2よりも高い比誘電率を持つ「high-k材料」をゲート絶縁膜に用いる手法も使われている。しかしその場合でも、1nm程度のSiO2をHfO2膜とSi基板の間に形成することで、欠陥の少ない界面が実現されることが知られていることから、今回の研究成果はそのようなhigh-k材料を利用したデバイス作製においても重要な成果ともしており、今回の研究成果を応用することで、デバイスの省電力化、信頼性向上、さらなる高密度集積化による小型化や高性能化などが期待されるという。

  • 欠陥生成の模式図

    SiO2/Si界面における欠陥生成の模式図 (出所:JASRI Webサイト)