AI(人工知能)技術を駆使して新しい農業経営や栽培技術を開拓・進化させて、パートナー企業などに提供しているFarmship(東京都中央区)は、レタスなどの野菜の栽培にAI技術を活用し、さらにレタス、トマトなどの市場価格を予測するなどにもAIを適用するなどと、野菜栽培技術や野菜流通などに多彩にAIを用いるハイテク型の農業ベンチャー企業として存在感を高めている。

同社は2022年4月に、植物工場で栽培するレタスの成長・生育状態を予測するAI技術を実用化したことを公表し、日本での農業へのAI技術利用の有効性を示している。

参考:NEDO、AIでレタスの質量を推定する実証試験に成功 - 植物工場の生産性向上に期待

このAI技術はNEDOの「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」事業開発の一環として、「Farmshipと東京大学との共同研究成果として実施された研究開発成果である」(宇佐美由久取締役)という。レタスの成長状態を画像から重さや成長度合いを単純に推測するのではなく、AI技術を活用し高精度な成長予測を実施している点が高精度な収穫成果を上げている。

市場価格の予測としては、例えばレタス、トマト、ミニトマト、イチゴ、ほうれん草の5品種の野菜・果物の市場価格(東京都中央卸市場の大田市場)を週単位で予測する市場価格予測サービスを2021年3月から公表し、農業従事者とその物流関係者に無料で公表し、野菜・果物の収穫や出荷の計画に役立つ情報を提供している(2022年12月時点では無料で公開中)。

同社が運営する野菜栽培工場は現在、8カ所あり(図1、各野菜栽培工場の経営する企業では、それぞれの出資比率が異なる)、Farmshipの自社工場や他社との合弁工場などとその形態は多彩で、資本を有効活用している。例えば、2020年7月から稼働し始めた藤枝市の植物工場「彩菜生活」工場は、東京電力エナジーパートナー(東京都中央区)と芙蓉総合リース(東京都千代田区)、Farmshipの3社が合弁会社の彩菜生活合同会社を設立し、その彩菜生活がLED照明を活用した完全人工光型植物工場として稼働させている。「この植物工場では、リーフレタスを1日当たり5.0t生産し、高効率で出荷している」(Farmship)という。

  • Farmshipが関わる植物工場

    図1 Farmshipが資本参加している8カ所の植物工場

各野菜栽培工場でもAI技術を活用した、高効率で収益が上がる野菜栽培技術を実施中だ。例えば、この藤枝市の「彩菜生活」工場では「無農薬で化学肥料と水を1/10に低減し、CO2(二酸化炭素)などの温暖化ガスの排出をほぼゼロにしている」とし、「一番の成果は土地利用を1/100まで低減し、土地を高度に有効活用していることだ」と説明する。

Farmshipは、日本の農業人口が1960年代初めには約1600万人いたのに対して、2000年には400万人、2020年には200万人を割るまで減少した事実を重視し、儲かる農業を目指し農業従事者・関係者の収入増加を図っている。この理由は、このまま農業従事者の減少が続くと、2025年ごろには50万まで減少するとの予測があるからだ。

日本での農業従事者の減少を食い止めるには、「日本での次世代農業のバリューチェーンの高効率を実現し、儲かる農業の確立が急務だ」と主張している(図2)。

  • 日本での次世代農業のバリューチェーン高効率の模式図

    図2 日本での次世代農業のバリューチェーン高効率の模式図