日本ヒューレット・パッカード(HPE)は12月9日、2023年度(2022年11月~2023年10月)の事業方針に関する説明会をオンラインで開催した。
すべての製品をas a Service化する目標達成を経て、同社は今後、ソリューションメニューの拡大にさらに力を入れつつ、セルフサービス機能を強化していく。また、営業体制の変革を進め、持続可能な社会への貢献に向けた活動を促進させる方針だ。
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オンプレミスとクラウドの境界線を無くす、共通の体験・運用モデルを提供
説明会の冒頭で、日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏は、11 月29日(現地時間)に発表された2022年度第4四半期の業績について触れた。
望月氏は、「第4四半期は過去最高益となった。売上高は前年同期比12%の成長となり、HPE GreenLake事業の売上高も同比33%の成長となった。HPE GreenLakeは日本でも好調で、売上比率の20%を超えている(全世界平均の2倍)。好業績を支えた要因は一貫した事業戦略にあると考える」と語った。
ITインフラにおけるクラウドニーズを捉えて、同社は2016年にハイブリッドクラウドソリューションの提供を開始。2019年にはすべての製品のas a Service化を進める戦略「Everything as a Service」がCEOのアントニオ・ネリ氏によって掲げられ、年次カンファレンス「HPE Discover 2022 Las Vegas」において目標達成が宣言された。
同社の事業戦略は「エッジ」「クラウド」「データ」の3領域のトレンドに応じて展開されてきた。2023年度以降は、グローバルで3つの領域において新たなソリューションを提供していく。
エッジの領域では、コネクティビティやエッジインフラ市場での活動を継続し、セキュリティとデータセンタースイッチングの市場で新ソリューションを提供する計画だ。
「例えば、『Aruba CX 10000』を投入する。あるいは米Pensandoとの連携によって分散サービススイッチを提供し、クラウド環境にも対応したデータセンターのネットワーキングなどを行う予定だ。セキュリティでもSASE(Secure Access Service Edge)やゼロトラストといったテーマで事業活動の幅を広げていく。新領域での事業展開により、当社が活動できる市場は2.1倍に拡がると考える」と望月氏は述べた。
「Aruba CX 10000」はデータセンターL2/3スイッチングとハードウェア高速化プログラマブルプロセッサ (Pensando P4) を組み合わせたスイッチ。800Gの分散型マイクロセグメンテーション、East-West のファイアウォールといった機能を提供する。
クラウドの領域では、堅調なITインフラ市場での事業を推進しつつ、クラウドマネジメント市場にも力を入れる。具体的には、クラウドの運用・管理のためのソリューションを拡充して、HPE GreenLake Platform上で提供する。
データの領域では、ストレージやHPC(High Performance Computing)市場での活動を継続しながら、データプロテクションやAI at Scale市場でも新ソリューションを提供する。
「これまでは、Everything as a Serviceの方針の下で、オーダーメイドで顧客のマルチクラウド環境の整備をしてきた。今後は『Advancing cloud experience』の方針の下で、オンプレミス、クラウド、エッジの境界線を無くして、共通の体験・運用モデルの提供に力を入れる。そのためにセルフサービス機能を強化していく」(望月氏)
加えて、パートナーのソリューションを自社サービスと併せてGreen Lake Platformにて従量課金で提供するなど、パートナーとのエコシステムも拡充する。
このほか、HPE GreenLake edge-to-cloud Platform上で提供しているストレージ管理の「Data Service Cloud Console」やネットワーク管理の「Aruba Central」など、複数の機能をHPE GreenLake Platformのポータルに集約して、必要に応じて呼び出して利用できるサービス構成にしていく構想だ。
コンサルや購買特性に応じたセールスなど営業体制を刷新
前年度に引き続き、日本においては顧客のデータファーストモダナイゼーションを実現する「Edge-to-Cloud Company」を目指す方針だ。
そのために2023年度は、事業活動を拡大・加速させつつ、「ソリューションメニューの拡大」「セールスエンゲージメントの変革」「持続可能な社会への貢献」の3つの活動に注力する。
ソリューションメニューの拡大にあたっては、2022年度に通信業界向けに提供してきた5G/IoTソリューションを他業界にも提供する方針だ。また、HPE GreenLake Platformにてローカル5G向けのシームレスなWi-Fi連携機能も追加する予定だ。
2022年8月の説明会で発表された「HPE GreenLake for Private Cloud Enterprise」や「HPE GreenLake for Data Fabric」の国内提供も開始する。
日本ヒューレット・パッカードが世界中の顧客に対して実施してきたDX(デジタルトランスフォーメーション)支援の知見を、体系的な方法論に落とし込み、それを基にDNA(Degital Next Adviser)がアセスメントやジャーニーマップの作成などを行うコンサルティングサービスにも注力する。
セールスエンゲージメントの変革では営業体制を2つに分けて、製品の効率的な調達に重きを置いた顧客とビジネスの課題解決策を求める顧客、それぞれに特化した営業を推進する。ビジネスの課題解決策を求める顧客に対してはパートナーのソリューションも併せて提供し、そのためにパートナーとの協力体制も強化する。
持続可能な社会への貢献に向けては、サーキュラーエコノミーの実現を目標に「作る」「使う」「退役」の3フェーズでのサステナビリティを強化する。
具体的には都市鉱山由来の原材料を極力使用して、再生エネルギー利用を徹底。また、HPE GreenLakeの利用を拡大することで、エネルギーの消費量をオンプレミスに比べて30%以上削減し、他社製品のリサイクルも継続する。
2023年度からは、2030年までに女性エグゼクティブ比率、女性社員比率を30%以上にするためのアクション「Vision 30」や、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進体制である「DEI推進カウンシル」を設立し、会社横断で課題に取り組む。