実験では、以下の3種類の条件のカジカの個体について、筋組織と肝臓における添加剤の濃度の測定が行われ、比較が実施された。

  1. 野外から採取された直後の個体
  2. 添加剤入りマイクロプラスチックを水中に入れ、マイクロプラスチックを摂取していないアミを餌として与えられた個体
  3. 添加剤入りマイクロプラスチックを摂取したアミを餌として与えられた個体
  • シモフリカジカとアミを用いた実験のデザイン。野外から採集した直後の個体(野生区)、添加剤入りマイクロプラスチックを水中に曝露してマイクロプラスチックを摂取していないアミを与えた個体(水中区)、マイクロプラスチックを摂取したアミを餌として与えた個体(アミ区)の体組織中の添加剤の濃度の比較が行われた

    シモフリカジカとアミを用いた実験のデザイン。野外から採集した直後の個体(野生区)、添加剤入りマイクロプラスチックを水中に曝露してマイクロプラスチックを摂取していないアミを与えた個体(水中区)、マイクロプラスチックを摂取したアミを餌として与えた個体(アミ区)の体組織中の添加剤の濃度の比較が行われた(出所:共同プレスリリースPDF)

その結果、マイクロプラスチックに含まれる添加剤が水中および餌の2つの経路によりカジカの組織に蓄積することが実証された。マイクロプラスチックを含むアミを摂食させた個体の筋組織からは、海水中にマイクロプラスチックを曝露させた個体や野外から採集直後の個体に比べ、非常に高い濃度の臭素系難燃剤が検出された。

一方、紫外線吸収剤の濃度は、マイクロプラスチックを含むアミを摂食した個体と、水中でマイクロプラスチックに曝露させた個体の間で、有意な差はなかったという。この違いには、添加剤の疎水性などの化学特性の違いが関与していることが考えられるとしている。

これまで添加剤は、プラスチックから溶け出して生物に蓄積するリスクは少ないとされていた。しかし研究チームは、今回の研究により、添加剤を含むマイクロプラスチックを摂取することで、添加剤が魚類の体組織に大量に移行することが世界で初めて示されたとする。一方、添加剤の種類によって、水中由来と餌由来の経路の相対的重要性が異なることも解明された。この違いが起こった原因の解明には、添加剤の生物体内への移行や蓄積に関するより詳しいメカニズムを研究することが必要だとしている。

マイクロプラスチックが海洋生態系に与える影響をより詳しく理解し、かつヒトが食料とする水産資源の安全性を確保するためにも、今後、より多種の海洋生物を対象に、今回明らかにされた現象の普遍性を検証することが求められているとした。