日本IBMは11月17日、IBM Quantum Summit 2022において11月9日に、ボーダフォン・グループがIBMと耐量子サーバーセキュリティで提携し、IBM Quantum Networkに参加することを発表したと報告した。

これにより、ボーダフォンはIBMの高度な量子コンピューティング・システムにクラウド経由でアクセスできるようになり、量子に関する専門的な情報も活用できるようになるという。ボーダフォンは、IBMとの今回の提携により、通信分野における潜在的な量子技術の活用方法を検証し、その進展を支援するとしている。

今回の提携の一環として、ボーダフォンは通信業者のさまざまな活用事例に対応できる量子コンピューティングを研究していくとする。また、IBMが主導する反復型プロトタイピングによって社員の量子技術に関するスキルを向上させるとともに、量子コンピューティングの専門家を積極的に採用して、社内で持つ専門能力を構築していくとするほか、今回の取り組みを通して、同社の多様なネットワーク・インフラストラクチャーとシステム全体に対し、IBM Quantum Safeの暗号化技術を適用する方法の研究も行うとしている。

量子コンピュータは将来的に、公開鍵暗号方式などの現在の標準的なセキュリティに対し脅威をもたらす恐れがあることが知られているが、業界的に手をこまねいているわけではなく、2024年までに標準化する量子安全暗号プロトコルの一部として、米国国立標準技術研究所(NIST)が4つのアルゴリズムを選出したことを発表済みである。そのうちの3つは、IBMが開発に協力しており、今後は、IBM Quantum Safeの通信分野におけるリスクを把握し、備えるにあたっての初の取り組みとして、ボーダフォンによるこれらのプロトコルの調査が行われるとしている。

ボーダフォンのR&Dグループ責任者のルーク・イベットソン氏は、今回の提携に対し、「IBMと提携することで、卓越したネットワーク最適化を実現する可能性を秘めた量子技術を利用できるようになりました。これは既存のコンピュータ単独では決して達成できないイノベーションであり、エネルギーの節約、コストの削減、より多くの場所で優れた接続をユーザーに提供することを可能にします。耐量子暗号に投資することで、量子コンピューティングの利点を追求し、当社のインフラストラクチャーとお客様のデータは、常に保護されているという安心感も得られます」とコメントしているほか、IBM Quantum Adoptionand Business Developmentの統括責任者であるスコット・クラウダー氏は、「通信業界のリーディング・カンパニーであるボーダフォンは、事業への量子コンピューティングの適用を模索し、長期間にわたるデータとシステムの保護のために耐量子暗号化プロトコルを適用することで、業界にとっての好例を示しています。私たちはボーダフォンと協力して、同社が通信業者、ベンダー、規制当局、オープン・ソース・コミュニティーのエコシステム全体にサービスを提供する中で、量子テクノロジーの採用と耐量子テクノロジーへの移行を同時に支援できることを嬉しく思います」と述べている。

なお、IBMとボーダフォンは、最近設立が発表されたGSMA Post-Quantum Telco Network Taskforceの初期メンバーでもある。この組織の目的は、高度な量子コンピューティングの未来における通信の保護を強化するためのポリシー、規制、および事業者の業務プロセスの定義を支援することとしている。

そしてボーダフォンは今回、量子コンピューティングの発展と実用化を研究する200以上のメンバーが参画するグローバル・コミュニティーであるIBM Quantum Networkにも参加することを発表。こうした取り組みは、ビジネスや科学に関連する計算を、古典的な計算のみと比べてコスト効率的に高く正確に行うことができるという、将来的な量子優位性への道筋を示すために策定されているとしている。

  • IBMは通信分野で量子技術が活用される時代に向けてボーダフォンと提携

    IBMは今回、通信分野で量子技術が活用される時代に向けてボーダフォンと提携した (出所:日本IBM Webサイト)