九州大学(九大)は11月15日、世界有数の大型レーザーである大阪大学(阪大) レーザー科学研究所(ILE)の「激光XII号レーザーシステム」を用いて、高エネルギープラズマ中で、太陽フレアと同様に、磁力線がつなぎ替わる「磁気リコネクション」(磁力線再結合)とともにプラズマが加熱・加速される様子と、局所的なプラズマ挙動を計測することに成功したと発表した。
同成果は、九大大学院 総合理工学研究院の森田太智助教、同・松清修一准教授、同・諌山翔伍助教、青山学院大学の山崎了教授、同・田中周太助教、富山大学の竹崎太智助教、北海道大学の富田健太郎准教授、阪大の坂和洋一准教授、同・蔵満康浩教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する多体システムの集合現象に関する全般を扱う学際的な学術誌「PHYSICAL REVIEW E」に掲載された。
磁気リコネクションは、ほぼ反平行に近い磁力線を伴う2つのプラズマが互いに近づく際に、境界面に流れる電流が電気抵抗で弱まり、消えるために磁力線がつなぎ替わる現象であり、再結合後は、磁場による張力でプラズマが加速・加熱される。
太陽フレアや磁気圏プラズマ、降着円盤などの天体プラズマ、磁場閉じ込め核融合プラズマなど、さまざまな環境においてプラズマを加熱・加速し、磁場からプラズマへのエネルギー変換の速さを決める重要な現象であるため、観測・数値計算などで盛んに研究されているが未解明な点も多い。
特に、磁力線がつなぎ替わる速さを定量的に説明できず、磁場からプラズマを構成する電子・イオンにどのようにエネルギーが変換・分配されるのかが明らかにされていない。電荷を帯びた流体としてプラズマを考える磁気流体近似では、観測される磁気リコネクションを説明できず、プラズマを構成する粒子個々の運動を考慮する必要があるという。
レーザープラズマを用いると、高温・高密度なプラズマが生成でき、これまでにないパラメータ領域で実験が可能であるため、研究の進展が期待されている。しかし、プラズマが微小で非定常なため、時間・空間分解した計測が難しく、これまで詳細なパラメータや、プラズマを構成する粒子集団の速度分布などを計測することができていなかったとする。
そこで研究チームは今回、激光XII号レーザーシステムを用いて、磁気リコネクションを引き起こすような反平行な磁場配位を高エネルギープラズマ中に生成することにしたという。