京都大学(京大)、鳥取大学、住友化学は11月7日、共同開発した柔軟性のある新素材により、圧力を加えずに高容量の全固体電池を安定作動させ、230Wh/kgの容量達成に成功したことを発表した。

同成果は、京大大学院 工学研究科の安部武志教授を代表とし、同・陰山洋教授、同・大内誠教授、同・大学院 エネルギー科学研究科の松本一彦准教授、鳥取大大学院 工学研究科の坂口裕樹教授、同・野上敏材教授、そのほか住友化学の研究者も参加した、産学共同講座「固体型電池システムデザイン」によるもの。詳細は、11月10日まで福岡市で開催の「第63回電池討論会」にて発表される予定だという。

全固体電池は、現在主流のリチウムイオン二次電池(LIB)に用いられる電解液を固体電解質に置き換えたもので、現行LIBに対してエネルギー容量や充電に要する時間、寿命などに優れるほか、LIBの短所である発火の危険性を構造的に取り除けることなどから、国家プロジェクトとして研究開発が進められているほか、多くの企業でも研究開発が進められており、中でも航続距離や充電時間の観点から高エネルギー密度および高出力特性が求められるEV用次世代電池としては、世界的に開発が進められている。

全固体電池の研究は進展しているものの、まだ解決できていない課題もあるという。その1つが、硫化物系無機化合物をベースとした固体電解質は硬く、柔軟性に乏しいため、良好な電池作動のために固体電解質と電極との界面をいかに接合するかという点だという。一般的には、電池セルに圧力を加えることで界面を接合させて電池を作動させるが、加圧するには部品などの重量およびコストが増加することに加え、接合が弱いと性能が低くなってしまうという課題があったとする。

そこで、2020年に設立された産学共同講座「固体型電池システムデザイン」では、柔軟性を兼ね備えた固体電解質により、圧力を加えなくても電極との界面接合が可能になる“柔固体”型電池の動作実証を目指すことにしたという。

試行錯誤の結果、開発された新素材を用いることで、無加圧方式で現行LIBと同等の約230Wh/kgの容量達成に成功したとする。加圧に必要な部品を省けるため、電池の重量およびコストの削減が見込まれ、安全性の高い全固体電池の早期実用化が期待できると研究チームでは説明している。

  • 柔軟な新素材を用いた高容量固体型電池

    柔軟な新素材を用いた高容量固体型電池 (出所:住友化学Webサイト)