スカパーJSAT、ゼンリン、日本工営の3者は11月1日、衛星データを用いて、斜面や盛り土などの土構造物、道路や埋め立て地および周囲のインフラの経年的変状をミリメートルの精度でモニタリングする、法人および自治体向けサービス「LIANA(Land-deformation and Infrastructure ANAlysis)」をリリースしたことを発表した。

近年、広域的かつ同時多発的に発生する豪雨災害や、高度成長期以降に整備されたインフラの老朽化が大きな社会問題となっている。加えて、対策に要するコストや人手不足の課題も深刻となっており、これらの課題に対し、平常時にLIANAを利用することで、一度に広域かつ低コストにモニタリングを行い、利用者の予防保全の意思決定をサポートすることで、災害に対する不安の低減、安全な街づくりに貢献すると3者は説明している。

LIANAは、2020年に3者が発表した「衛星防災情報サービス」で提供する商品の1つで、3社のノウハウが集結された内容となっている。

具体的には、合成開口レーダー(SAR)画像における解析ツールの開発に強みを持つスカパーJSATが解析を担当。SARは、天候に左右されず、また日夜問わず地表の様子をセンシングすることが可能な技術で、スカパーJSATでは、SAR衛星が撮像した画像に対し、独自に開発を進めて高精度化を実現した解析アルゴリズムを実施。ミリメートル単位で、衛星画像内に含まれる対象物の変動量を時系列で可視化し、利用者が確認したいエリアの地盤変動を時系列で表示を行うとする。

  • SARにより取得されたデータ

    (左)SARにより取得されたデータ。(右)スカパーが開発した解析ツールにより、地盤沈下の状況が解析された結果。青色領域が沈下傾向を表している。背景図はゼンリン地図。原初データ提供はJAXA (出所:スカパーJSAT Webサイト)

スカパーJSATの解析により判明した危険性は、国土交通省の地盤伸縮計における基準、および日本工営による、インフラや土構造物の調査、測量、設計から維持管理に関する知見に基づき評価が行われ、解析箇所の提案から危険性評価までが行われるとする。なお、これまで日本各地の斜面や地すべり、道路、空港などで実証を重ね、実地測量データと突合(とつごう)することで精度検証が実施されている。

そして、結果が提供されるWebシステムには、利用者が視覚的に分かりやすく、管理業務の中にも組み込めるノウハウを日本工営が提供。ゼンリンは、企業や自治体が管理する敷地や施設への影響を把握する際に必要な詳細な地図データなどをLIANAに実装し、WebUIはスカパーJSATが開発。これにより、利用者は危険エリアの周囲への影響を把握することが可能になるという。

さらに、衛星画像を活用することから、測量だけでは把握しきれなかった数十km四方の広域エリアを、一度にスクリーニングすることが可能となる。そのため、保守および点検コストを低減することもできるという。このように、平常時からのモニタリングで能動的な管理・対策を可能にするとしている。

  • LIANAのシステム画面イメージ

    LIANAのシステム画面イメージ(斜面)。赤は隆起傾向、青は沈下傾向が表されており、解析点ごとに時系列グラフで変動傾向が示されている。また、変動量に応じた危険度の5段階指標である「斜面変動ランク」によってリスクが評価される (出所:スカパーJSAT Webサイト)