NTTは10月24日、光メタサーフェスの原理に基づいた革新的光学技術「メタレンズ」と、AIに基づく最先端画像処理技術を密に融合することで、通常のデジタルカメラのレンズをメタレンズに置き換えるだけで、従来のデジタルカメラが取得するよりもより詳細な色情報画像である「ハイパースペクトル(HS)画像」を取得できるイメージング技術を開発したことを発表した。

今回の成果は、2022年11月16日から18日までオンライン開催される「NTT R&D フォーラム - Road to IOWN 2022」にて展示される予定だという。

HS画像とは、通常のデジタルカメラよりも多数の色情報(波長)に分光して撮像した画像のことで、1つのHS画像は各々の色情報に対応した画像からなり、一般的には数十点以上の画像で構成される。それにより、素材の違い、食物の新鮮さ、植物の生育状況など、ヒトの目でも把握が困難な被写体の性質を見分けることが可能とされている。

ただし、従来のHSイメージングには主にスナップショット方式とラインスキャン方式の2種類があるが、スナップショット方式は色数を増やすと解像度と感度が低下してしまい、ラインスキャン方式は機構的にフレームレートを高められないという課題をそれぞれ抱えていた。そのため、HSカメラは従来のカラーカメラの置き換えにはならず、分析機器や製造ラインなど、限定的な適用となっていたという。

そこで同社は今回、従来のデジタルカメラの性能を維持しつつ、光メタサーフェス技術を応用した明るいメタレンズと、物理的な制約を超えてスペクトル再構成を可能にするAIによるHS画像再構成技術を組み合わせることで、画像の特性を犠牲にすることなく従来HSイメージングの課題を克服することにしたという。

光メタサーフェスは、人工的な構造により、材料本来の特性では実現できない光学性質を実現する技術のことで、今回開発されたメタレンズには同技術が応用されており、その表面には数百nmサイズの光を透過する構造体が多数並べられている。この構造体1つ1つを精密に設計・作製することで、光の波長ごとにまったく異なる機能を持たせられるのがメタレンズの特徴だという。