東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学(医科歯科大)は10月14日、2024年度中をめどとして、できる限り早期の統合を目指す基本合意書を締結し、1法人1大学体制とし、大学名も新たにすること計画していることを発表した。

  • 基本合意書を持ち記念撮影にのぞむ東工大の益一哉 学長(左)と医科歯科大の田中雄二郎 学長(右)

    基本合意書を持ち記念撮影にのぞむ東工大の益一哉 学長(左)と医科歯科大の田中雄二郎 学長(右)

両者は2022年8月9日に統合に向けた協議を開始したことを明らかにしていたが、それ以降、10月14日までに延べ34回、60時間以上にわたる集中的な協議を進め、指定国立大学法人同士の統合として、どのような形が最適であるかを模索してきたという。その結果、「地球規模の課題解決に向けて、大学はその知を結集し、より大きな役割を果たすことが社会から期待されている」という背景を踏まえ、「国際的に卓越した教育研究拠点として社会とともに活力ある未来を切り開くことを目指す」ために、1法人で別々の大学を有するのではなく、1法人かつ1つの大学となることが最大のメリットを得られると判断したという。

  • 統合の概要

    統合の概要

  • 1法人1大学にした理由

    1法人1大学にした理由

医科歯科大の田中雄二郎 学長ならびに東工大の益一哉 学長は、新大学の名称は未定としながらも、「みんなに覚えてもらい、親しんでもらえる名前が重要」としており、そんな新大学の目指す姿として以下の4つを掲げた。

  1. 両大学の尖った研究をさらに推進
  2. 部局等を超えて連携協働し「コンバージェンス・サイエンス」を展開
  3. 総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材を輩出
  4. イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化
  • 新大学が目指す4つの姿

    新大学が目指す4つの姿

ただし、統合に際して、教育課程の面で社会的なインパクトが大きいことから、当面の間は2つの大学が設置するそれぞれの学位や教育課程、収容定員については変更をしない方針を掲げており、2022年4月よりはじまった国立大学法人 第4期中期目標期間が終了する2028年3月までを新大学における移行期間ととらえ、学位や教育課程の変更を伴う組織改編も含めた議論を進めていくとしている。

その新たな大学の組織としては、「自由でフラットな人間関係」のもとで、以下のような環境の実現を目指した仕組みや制度を作ることを計画しているとする。

  1. 専門性・役割の多様性を尊重
  2. 失敗を恐れず挑戦
  3. 構成員のウェルビーイング

今回の統合そのものも2番の失敗を恐れずに挑戦することにつながるとするほか、新大学に集うすべての構成員各自の生活と大学における活動をバランス良く進めることで、自らのウェルビーイングを基盤として、余裕と自発性をもって新たなことに取り組み、社会に貢献することを目指すとしている。

  • 新大学が目指す組織文化の概要

    新大学が目指す組織文化の概要

また、まだコンセプトの段階であるため具体的な話し合いも始まっていないが、異なる学術を融合させることで、さまざまな課題に対応するコンバージェンス・サイエンスの実現、特に医歯理工連携の実現をする場の構築なども考えているとのことで、「それぞれの大学が培ってきた伝統や先進性を活かしながら、より良い新たな大学を作っていきたい」との思いを語っている。

  • コンバージェンス・サイエンスの概要

    コンバージェンス・サイエンスの概要。新大学が目指すのは未来の姿であるコンバージェンス・サイエンス3.0となるとする

  • コンバージェンス・サイエンス3.0のイメージ

    コンバージェンス・サイエンス3.0のイメージ

なお、今回の統合は、決して人員の削減を目的としたものではないことを田中医科歯科大学長、益東工大学長も強調している。「人手不足同士の大学の統合なので人減らしはしない。知の拠点はそういった人の集まりで実現されるべきで、人員削減はその力を削いでいくことになるので、その方向性は考えていない」(田中医科歯科大学長)、「東工大と医科歯科大でオーバーラップしているところは少ない。今回の統合は人員削減やリストラをするものではないというのがコンセプト。事務とかも効率化で人員に余裕ができれば、不足していた部分に回し、新しいことに挑戦できると思っている。また、研究者も足りていないので、それをさらに減らすということは考えていない」(益東工大学長)と、むしろ統合によって生まれるであろうシナジーを最大限に引き出すための統合であるとする。

人員に余裕ができれば、研究費の獲得のための申請書を書くなど、そういった事務作業を研究者に代わって進めてくれるサポート要員を分厚くできるようになる。益東工大学長も、「教員が本来やりたいと思っていることに対する時間が割けないという問題がある。統合することで、多くの人の仕事量が増えないようにしたい。そのためには、そこまで議論は進められていないが、慢性的な人手不足解消に向けた人員投入を行う必要があると思っている」と、むしろ大学で働く人を増やしたいという希望を語っている。

また、新大学は社会に開かれた大学でありたいともしており、産業界と自由に交流できる場所にできればとしている。特に、産学連携は重要な意味を持つとしており、そうした取り組みも挑戦であるとしている。

なお、新大学の設立に向け、田中医科歯科大学長は「新しい大学は社会とともにあることを強く意識している。医科歯科大では、コロナ禍で社会に貢献したつもりであったが、結果的には社会の皆様から応援や励ましをいただいて、大学は社会によって支えられているものだと認識させられた」と抱負を述べており、益東工大学長は「大きな一歩、大きなチャレンジだと思う。大学の中の人には挑戦しろと言ってきた。我々も挑戦することを示す大きな一歩です。困難もあると思います。今日使わなかったフレーズとして、医科歯科大のミッションには『知と癒しの匠を創造する』というのがあり、東工大の源流である東京職工学校と言われていた時代に、通じる言葉として『匠』があります。2つの匠が新しい社会を作っていきたいと思っています」と抱負を述べている。