今回の研究では、WTe2の独特な結晶構造に由来した、その原子層平面に対して垂直方向のスピン情報が存在しうることが着目された。そして、完全に電気的な手法のみにより、この垂直方向のスピン情報を電流によって生成し、そのスピン情報を電圧信号として読み出すことにも成功したとするほか、生成されたスピン情報は熱ゆらぎに対して強靭であり、室温の300K(約23℃)でも観測できることが実験的に示されたともする。

  • ワイル半金属であるWTe2におけるスピン状態生成の概念図

    ワイル半金属であるWTe2におけるスピン状態生成の概念図。非磁性の(スピン情報0)金属から電流をWTe2に注入すると、WTe2の結晶構造に由来した効果によるスピン情報が生成される。スピン情報が生成できるのは、結晶構造における矢印方向に電流を流した場合のみ (出所:京大プレスリリースPDF)

なお、研究チームでは、今後求められる研究成果として、スピン情報の生成効率を上げていくことだとしているのと同時に、生成されたスピンを計測するだけでなく演算に用いていくスピントロニクスの観点からの、技術的プラットフォームの構築も必要だとしており、これらを通じて、ワイル半金属を用いた超低消費エネルギー情報生成・伝搬・計測・演算システムの創出が期待できるとしている。