高酸化数のマンガンは一般に酸化触媒として利用されることから、不活性ガス雰囲気と酸素雰囲気でそれぞれの触媒の性能が評価されたところ、マンガンの酸化数が触媒性能に影響を与えることが見出され、酸化数の低いマンガンはヒドリドを形成する反応経路で進行し、酸化数の高いマンガンはアルコールの酸化を経る反応経路で進行することが確認されたとする。

研究チームによると、マンガンの酸化数により触媒性能が大きく変化する触媒系は珍しいという。また、マンガン上に結合したたヒドリド種の反応性についての詳細な検討が行われたところ、MgOからマンガン酸化物への電子供与が反応促進に寄与していることが確認できたとする。

  • 炭素-炭素結合形成反応における触媒効果

    炭素-炭素結合形成反応における触媒効果 (出所:東工大プレスリリースPDF)

今回の成果について研究チームでは、自然界に豊富に存在するマンガンやマグネシウム、アルミニウムを触媒として用いることで、入手容易な有機化合物から有用な有機化合物を少工程数かつ低コストで合成するという究極的な目標達成につながるものだとしており、将来的には、環境負荷の高い金属触媒に頼る化学合成から脱却し、有用な有機化合物を提供することで、人類の持続的発展に貢献することが期待されるとしている。

なお、今回の研究で開発されたMgO共担持マンガン触媒は、ヒドリドを経由した変換反応を促進することから、分子状水素やヒドロシランなどのヒドリド源を用いた変換反応にも適用できる可能性が高く、高付加価値な化成品合成に利用できることが考えられるとしており、今後、金属の酸化数が触媒性能に与える大きな影響を、さまざまな非貴金属触媒において系統的に調べることで、特異的な触媒作用の開拓に貢献することが期待されるともしている。