東京工業大学(東工大)と関西学院大学は9月1日、鉛-硫黄結合を有する配位高分子からなる可視光応答型の固体光触媒を開発し、貴金属や希少金属を用いない触媒として、従来にない高効率でCO2からギ酸への変換を行うことに成功したことを発表した。
同成果は、東工大 理学院化学系の鎌倉吉伸特任助教、同・前田和彦教授、関西学院大 理学部化学科の田中大輔教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、不均一系・分子・生体などの触媒作用に関連する学問全般を扱う学際的な学術誌「ACS Catalysis」に掲載された。
植物の光合成に倣った、光エネルギーを化学エネルギーに変換する「人工光合成」は、CO2の削減に加え、CO2を資源化できるできることから、注目を集めている。
その人工光合成で重要な役割を果たすのが、CO2を有用な化学物質に変換する固体光触媒で、一般的に固体触媒は狙った反応だけを選択的に進めるのが難しい一方で、反応後のろ過などにより簡単に触媒を分離・回収することができるため生成物の分離がしやすく、触媒をリサイクルできるため、実用性に優れているとされる。
中でも、環境的な側面から太陽光の約半分を占める可視光を活用できるものが望ましいとされるが、これまでの可視光応答型CO2変換光触媒システムの大半は、貴金属や希少金属を必要としており、よりコストがかからず、潤沢に入手可能な普遍元素を使った固体光触媒の開発が望まれていた。
金属イオンなどの周囲に非金属イオンなどの配位子が立体的に結合したものは「錯体」と呼ばれ、金属イオンと複数の結合部位を持った高分子の配位子からなる錯体が、連続的に連なってできるものを「配位高分子」という。
配位高分子は、そこに含まれる金属イオンと配位子の組み合わせによってさまざまな性質を発現し、特殊な触媒などとしても利用されている。また配位高分子の中には、比較的大きな比表面積を有するものがあり、それらは高い活性を示す触媒になる。そこで研究チームは今回、この配位高分子を用いた光触媒の開発を行うこととしたという。