宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月3日、種子島宇宙センターにて「LE-9」エンジンの領収燃焼試験(AT)を実施、その様子を報道公開した。LE-9は、次期基幹ロケット「H3」で使用する新型エンジン。開発が難航し、打ち上げ延期の原因にもなったが、燃焼試験は無事完了し、2022年度内の初フライトに向け、一歩前進した形だ。
本番用エンジンを使った燃焼試験
領収燃焼試験は、製造したエンジンの燃焼特性を取得し、フライトに適用できることを確認するための試験だ。ロケットに搭載するエンジンでは必ず実施するもので、H-IIAロケットのLE-7Aエンジンなどでも、フライトのたびに毎回行われている。
LE-9エンジンは、ターボポンプに共振などの問題が発生し、開発が難航したものの、設計の変更により、初号機での問題はほぼ解決。これまで、試験用エンジンによる燃焼試験を繰り返し実施してきたが、いよいよ打ち上げに向け、この領収燃焼試験では、本番用エンジンを使ったテストを行う。
H3ロケット初号機には、2基のLE-9エンジンを搭載する。1基目については、すでに9月6日と12日に領収燃焼試験を実施、確認が完了している。今回公開されたのは2基目の試験で、1回だけ行う予定だが、追加で確認したいことが出てきた場合、2回になる可能性もあるという。
燃焼の予定時間は約65秒。燃焼時間には3つのフェーズがあり、まず最初のフェーズでは、エンジンの起動後、メインバルブの開度を自動調整し、所定の作動点を目指す。次のフェーズでは、開度を固定したままデータを取得。そして最後のフェーズでは、液体酸素ターボポンプ(OTP)の入口圧力を低下させ、その状態での特性を取得する。
今回、報道陣は第1射点の近くでスタンバイ。400mくらい離れた場所から、領収燃焼試験を見ることができた。位置的にエンジンは直接見えなかったものの、点火後、大きな音とともに水煙が発生、太陽を遮るほどの高さになった。燃焼は61.2秒(速報値)で終了。予定よりやや短かったものの、これは想定の範囲内だという。
その後、燃焼試験が実施された「吉信燃焼試験テストスタンド」へ移動。この時点ではまだデータの評価前のため、試験結果の詳細については不明なのだが、ここで合流した岡田匡史プロジェクトマネージャは、「まだ大きな山を登っていかないといけない。力を合わせて頑張っていきたい」と、気を引き締めた。
なお、今回は見ることができなかったのだが、テストスタンドの反対側はこのようになっている(下写真)。エンジンからは高温の燃焼ガスが吹き出す。そのままだと設備が痛んでしまうため、下方から滝のように大量の水を流すことで、冷却する仕組みだ。ここで発生した水蒸気が、あの大きな雲を作り出しているのだ。
領収燃焼試験が完了すれば、次はいよいよ、射点にロケットを立てて行う「実機型ステージ燃焼試験」(CFT)である。このCFTは、固体ロケットブースタ(SRB-3)は装着せず、フライト品のフェアリングを付けた状態で実施する。時期は11月上旬~中旬を予定しており、CFTが無事に終われば、打ち上げ時期が見えてくるはずだ。