自動車が主としてADASによる支援や運転者による制御を受けるものから完全な自動運転へと移行するのに伴って、イメージセンサ(イメージャ)の性能がより一層重要になります。これは特に、すべての道路利用者の安全を確保するために、周囲環境を検知するイメージャについて言えることです。

照明が暗いときや気温が高い場合は、センサ性能が低下するため、道路状況の検知が困難になります。したがって、自動運転を行うにはイメージセンサはあらゆる状況で優れた性能を発揮する必要があります。

本稿では、業界が求める性能を期待される価格で実現するために、イメージセンサが最新技術によってどのように進化し、自動運転の課題に対応しているかについて考察します。

自動車は、運転者がすべてを制御している状態から、運転支援の提供を経て、最終的に運転操作を引き継ぐには、周囲の状況を検知できるようになる必要があります。自動車には様々なセンサモダリティを使用できますが、イメージセンサは、形状、テクスチャ、および色を捉える独自の機能を備え、比較的低コストであることから、最も汎用性が高く、広く普及しているセンサの1つです。

イメージセンサを車載環境で配備する場合、多くの課題に直面します。照明の状態によっては、極端なコントラストレベルや濡れた路面で眩しい反射が生じる可能性があり、また雨や霧、雪などの気象条件によって視界が妨げられる場合もあります。信号機や道路標識、車のヘッドライトやテールライトには、一般にLED照明が使用されています。LED照明の大きな利点の1つは、非常に効率が高いことですが、大抵の場合はパルス発光が使用されています。パルス発光は人間の目には見えないものの、イメージセンサではこれがフリッカ(ちらつき)を伴う画像ストリームとして出力されてしまいます。

車載ビジョンの主要な役割の1つは、車両の進路に存在する物体を検知することです。遠くの物体が見られるほど、車両が判断して反応するまでの時間的余裕が大きくなります。遠方の物体を識別するために高解像度と高画質が必要とされるのはこのためです。

前方を見るだけでなく、360度の視界を提供したり、車室内を監視したりすることもあるため、システム全体で車両に搭載されるイメージセンサの個数が多くなることから、コストは非常に重要です。中には、十数台の画像カメラを搭載している自動車もあります。

運転支援から自動運転への移行

図1に示すように、米国自動車技術者協会(SAE)は、インテリジェンスをまったく備えていない車両から、あらゆる運転条件下で完全に自動化された車両まで、進化に応じて6レベルのモデルを定義しました。

  • SAEによる自動車の自動化レベル向上のモデル

    図1: SAEによる自動車の自動化レベル向上のモデル

現在、多くの車両はレベル2での運転が可能になっています。レベル2には、高速道路での車線逸脱の修正など、最も基本的な制御が含まれます。レベル3では、さらに多くの車両の動きを自動制御するため、レベル3への移行は重要です。レベル3に対応するには、イメージセンサは、今日一般的に使用されている解像度の4倍に相当する8MPの解像度を持つ必要があります。これは高速道路など、特定の状況で一部の自動運転を行うには十分です。レベル4およびレベル5の運転に移行するには、さらに高い解像度のイメージセンサが必要であり、それによってあらゆる状況での自動運転に対応できます。

同様に、サラウンドビューカメラや死角用カメラも、用途に応じて3MPあるいは8MPまで解像度を上げたり、LEDフリッカ軽減動作とハイダイナミックレンジ(HDR)動作機能を搭載したりすることも必要です。

また、優れた色性能を維持しながら低照度での動作を改善するために、ベイヤ配列カラーフィルタアレイ(CFA)に代わって、非ベイヤ配列フィルタの採用が増えています。

ピクセルサイズ

センサの解像度が高くなると、ピクセルサイズが同じ場合、大幅にコストが上昇します。現在、ピクセルサイズは4.2μmから3μmです。しかし、ピクセルサイズを2.1μmに縮小できれば、8MPセンサのコストを大幅に削減できます。つまり、2.1μmピクセルの8MPセンサは、4.2μmまたは3μmピクセルの8MPセンサに比べ、はるかに低コストになります。相対コストの比較については図2をご覧ください。

  • ピクセルサイズの縮小による大幅なコスト削減

    図2: ピクセルサイズの縮小による大幅なコスト削減

その結果、低照度性能、信号対ノイズ比(SNR)、HDRなどの重要な性能パラメータに何らかのトレードオフが存在すると考える人もいるでしょう。しかし、そのようなことはありません。3.75μm、3μm、2.1μmピクセルのオンセミ製センサの低照度性能指標(SNR1とSNR3)は実質的に同等です。オンセミの新しい2.1μmピクセル・イメージセンサのSNRとHDRの性能は、3μmピクセル・イメージセンサーよりも優れています。SNR1とSNR3の指標の相対比較は、図3を参照してください。

  • ピクセルサイズの縮小は低照度性能に影響しない

    図3: ピクセルサイズの縮小は低照度性能に影響しない

さらに、別のサプライヤの3.0μmの3MPまたは5MPセンサと比較すると、オンセミの2.1μmの8MPセンサソリューションでは、同等以下のコストで検出距離が向上しています。

  • オンセミの8.3MPセンサは競合の3μmセンサよりも遠方の物体を検出可能

    図4: オンセミの8.3MPセンサは競合の3μmセンサよりも遠方の物体を検出可能

夜間にヘッドライトだけで照らした岩を検出するという難しい事例では、競合他社の3μmの3MPおよび5MPセンサは、それぞれ125mと150mの検出距離を達成できますが、オンセミ製センサでは170mを達成しました(図4参照)。この距離の違いにより、システムの反応時間をより長く確保できるので、安全性の向上に大きく寄与します。

画質と、より高い車載温度

カラーフィルタをベイヤ配列からRYYCy(赤-黄-黄-シアン)またはRCCB(赤-透明-透明-青)に変更し、Clarity+のような高品質HDRカラーパイプラインを組み込むと、センサの性能と画質が向上します。非ベイヤのカラーフィルタ配列を使うと、各ピクセルにより多くのフォトンが入射できるため、低照度性能が向上します。これによって、センサは厳しい条件でもより明瞭に「見える」ようになると同時に、取り込んだ正確な色の生画像を処理して、高画質の画像を生成できます。

SNRは、システムがセンサで生成された画像内の物体を検知する能力に関係するため、あらゆるイメージセンサにとって重要なパラメータです。高温では、代表的な3μmのスプリットダイオードセンサのSNRは約20dBまで低下します。このレベルではノイズがはっきり見え、物体の検知がより困難になります。同等のオンセミ製センサは、30dBを上回るSNRレベルを実現しています。このレベルでは、ノイズが減少し、物体の検知が格段に容易になります。その結果、ビューイングアプリケーションでは、視覚的により満足のいく画像が得られます。

イメージセンサにとって温度は常に課題であり、温度によって画質と性能が低下する可能性があります。センサが耐用期間の80%以上にわたって接合部温度80℃以上になる環境に置かれる車載アプリケーションでは、特にそのことが言えます。これはイメージセンサが直射日光の当たる場所に設置され、動作時に発熱する他の電子部品とともに狭い密閉空間に収容するように設計されているためです。

125℃の接合部温度でも、ピクセルサイズ2.1μmのオンセミ製イメージセンサは、中照度から高照度状態で25dBを超えるSNRを達成できます。これによって、あらゆる動作条件で正確な物体検知が可能になります。

最新の2.1μm車載用HDR LFMイメージセンサ

オンセミの最新の車載用イメージセンサは、最新世代の2.1μmスーパーエクスポージャ・ピクセルを使用し、3840×2160(8.3MP)の解像度を提供しています。このセンサは真のLEDフリッカ低減(LFM:LED Flicker Mitigation)ピクセル技術を採用しており、最大155dBのHDR画像を生成し、フリッカフリー動作時でもこれが110dBを超えます。最大60fpsのHDRフレームレートが可能ですが、フレームレートを45fpsに下げると、HDRが110dBから145dB以上に向上します。

  • オンセミの2.1μmセンサ(上)と競合他社の3μmセンサ(下)の画質比較(トリミング後)

    図5: オンセミの2.1μmセンサ(上)と競合他社の3μmセンサ(下)の画質比較(トリミング後)

低照度性能に関しては、この2.1μmセンサは優れた3μmピクセルのセンサと同等以上の性能を達成しています。図5は、競合他社の3μmセンサと比較した場合における、2.1μmセンサのHDR画質の違いを示しています。ダイナミックレンジが格段に優れていることが明らかで、細部をよく捉え、信号機本来の色を取り込んでいることが分かります。SNRは100℃までの接合部温度(Tj)で30dBを超えて推移しており、極端な温度(Tj=125℃)でもSNRは25dBを上回ります。このセンサは、ベイヤ配列および非ベイヤ配列(RGGB、RCCB、RCCG、RYYCy)などのCFA技術のおかげで、あらゆる条件下で高い色再現性を実現し、シャープな画像を生成します。

まとめ

高度な自動運転車では、車両の周囲環境の検知が可能な高性能イメージセンサへの依存度がますます高まっています。イメージセンサの性能を向上させることは可能ですが、コストを抑えてそれを実現することは困難です。

オンセミのイメージングデバイスの設計では、ピクセルサイズを縮小することで、低照度性能のSNRやHDRを損なうことなく、8MPセンサを現在の4.2μmの2MPセンサや3μmの4~5MPセンサと同等の価格で実現できることを実証しました。さらに、非ベイヤ配列のCFAを組み込むことで、重要な低照度性能を一段と向上させることができます。

センサが発熱部品とともに狭いスペースに収容され、太陽光にさらされる場合、常に温度が課題となります。オンセミのセンサは、最高125℃の温度でも優れた性能を発揮できるため、あらゆる動作条件下で高画質の画像取得が可能です。

より高い自律性を備えた安全な自動運転車への移行には、次世代のイメージセンサが不可欠です。

著者プロフィール

セルゲイ・ヴェリチコ(Sergey Velichko)
onsemi
ASD技術・製品戦略担当シニアマネージャ