今回用いられたフォトニック結晶レーザーは、単一の半導体素子でありながら、極めて高い出力光(1W以上)を出力できるため、従来のファイバーアンプなどの大型装置を用いる必要がないという。さらに通常の半導体レーザーと比較して、大きな領域で単一モードで発光するため、ビームの拡がり角がおよそ0.1度以下と極めて小さくなり、外部レンズ系を用いることなく、そのまま空間に発射可能であり、これら2つの特徴によって、送信機構成を簡素化することができるとする。

  • 従来の送信機とフォトニック結晶レーザーを用いた送信機のイメージ

    従来の送信機とフォトニック結晶レーザーを用いた送信機のイメージ (出所:京大プレスリリースPDF)

実験では64QAM変調された、864MHzの帯域を有する直交周波数分割多重方式(OFDM)光信号を、1W級の光パワーでフォトニック結晶レーザーから発射させ、1.1mの空間伝送に成功したとする。これまでフォトニック結晶レーザーを用いた、レーザー加工や光の測距(LiDAR)は実証されてきたが、通信での実証は世界初となるとしている。またこの結果は、フォトニック結晶レーザーを用いた毎秒5ギガビット相当の自由空間光通信の実現の可能性を示すものともしている。

  • 実証実験の様子

    実証実験の様子 (出所:京大プレスリリースPDF)

なお、研究チームは今後、フォトニック結晶レーザーを用いた、より高出力で高速な自由空間光通信を実現し、Beyond 5G/6G時代における宇宙空間での通信を支える光伝送技術の研究開発を推進していくとしている。