太陽電池の効率は、太陽光の放射照度1kW/m2あたりの発電量をデバイスの面積で割ることによって求められる。そこで今回の研究では実用化が視野に入れられ、研究室レベルのサイズ(約0.3cm2)よりも大きい世界標準の評価サイズである1cm角(1cm2)のデバイスが作製された。
均一なナノスケールの厚さの多層構造を持つ1cm角の大面積デバイスを作製するためには、研究室レベル以上の高度な技術が必要なことから、以下の2つの界面制御に取り組んだとする。
1つ目は、ペロブスカイト層と電子輸送層の界面にフッ素原子を有する(撥水性を有する)ヒドラジン誘導体(5F-PHZ)を導入。その結果、界面欠陥が最小限に抑えられ、結晶性が向上し、発電ロスが低減したとするほか、電子輸送層を通じて、ペロブスカイト層に侵入する水分子が界面で遮断されるため、耐久性が向上したとする。
2つ目が、正孔輸送層とペロブスカイト層の界面にホスホン酸誘導体「MeO-2PACz」の導入。この結果、酸化ニッケルの欠陥構造をMeO-2PACzが埋めることによって、発電ロスが抑制されたとするほか、酸化ニッケルとペロブスカイト層の直接接触に由来する分解反応を防ぐことができ、結晶性の良好なペロブスカイト層を形成することができたとする。
この2点の工夫により、20%以上の発電効率を維持しながら、1000時間以上の連続発電に耐えられる、耐久性の高い1cm角のペロブスカイト型太陽電池が実現されることとなったが、研究チームでは今後、グローバルな研究開発競争に負けないよう、研究を加速させるためには、種々の分子について、効率と耐久性などの太陽電池性能に対し、界面導入方法、各層の結晶や表面構造、界面での電子や正孔移動特性の要素に分けてデータベース化を行うとしているほか、データ駆動型研究により、性能を予測しながら界面制御のための分子設計を行うことによって、さらに高効率で耐久性の高いペロブスカイト太陽電池の研究を進めていくとしている。