慶應義塾大学(慶大)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、京都産業大学(京産大)、岡山大学、神戸大学の5者は9月2日、金星大気に対するデータ同化システムに、JAXAの金星探査機「あかつき」から得られる観測データを加えることで、金星大気の客観解析データ(気象データセット)を作成することに成功したと発表した。

同成果は、慶大 自然科学研究教育センターの藤澤由貴子研究員、同・大学 法学部の杉本憲彦教授、JAXA 宇宙科学研究所 月惑星探査データ解析グループの村上真也主任研究開発員、京産大理学部 宇宙物理・気象学科の高木征弘教授、岡山大 理学部地球科学科のはしもとじょーじ教授、神戸大大学院 理学研究科 惑星学専攻の樫村博基講師、同・林祥介教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

金星の自転周期は地球とは逆行で、しかも地球の243日強という非常にゆっくりとしたものとして知られている。しかも、金星の1年は225日弱なので、金星の1日は1年以上というエキセントリックな自転と公転との関係となっている。

そして金星の大気は全体でもって、そのような非常にゆっくりとした自転速度を追い越していくという高速回転をしている。上層大気に至っては、赤道上の自転速度の60倍(時速約360km)にも達する。同現象は「大気スーパーローテーション」と呼ばれ、いまだにそのメカニズムの詳細がわかっておらず、惑星気象学最大の謎の1つに数えられている。

理解が進まない大きな原因としては、大気内部の運動の観測が困難である点が挙げられる。金星の高度60kmを中心に上下10kmほどには、空全体を覆う硫酸の厚い雲があるため、観測が妨げられているためである。

そうした中で、「あかつき」が観測を始める前から、金星大気の数値シミュレーションを行うための大気大循環モデル「AFES-Venus」の開発を進めてきたのが研究チームだという。AFES-Venusは、現実的なスーパーローテーションの再現と維持、これまでの観測で発見されてきた周極低温域や雲の巨大な筋状構造の再現、高解像度計算による熱潮汐波からの自発的な重力波放射の発見など、さまざまな研究成果を挙げてきた。

また、「アンサンブルデータ同化」と呼ばれる地球や火星大気のデータ同化で用いられている手法を「AFES-Venus」に導入した金星大気データ同化システム「ALEDAS-V」を開発。欧州宇宙機関の金星探査機「Venus Express」の観測データを用いた同化実験により、探査機の観測データを利用したデータ同化が金星大気にも有用であることを示してきた。

地球や火星大気の客観解析データは、すでに数多く作成されて公開されており、それらの分析研究が盛んに行われている。一方で、金星大気の観測や数値シミュレーション研究は、地球や火星に比べて遅れているため、金星大気の客観解析データの作成は挑戦的な取り組みだが、研究チームは今回、それに挑むことにしたという。