東京都立大学(都立大)は8月19日、半球型の超音波トランスデューサアレイと適応的な位相振幅制御技術を巧みに組み合わせることで、音波を利用して完全非接触において、ステージ上にある微小物体を選択的に拾い上げ、空中浮揚させられる「空中音響ピンセット」を開発したことを発表した。

同成果は、都立大大学院 システムデザイン研究科の近藤昇太大学院生(研究当時)、同・大久保寛准教授らの研究チームによるもの。詳細は、応用物理学会が刊行する応用物理学に関する全般を扱う欧文学術誌「Japanese Journal of Applied Physics」に掲載された。

音波が異なる媒質間を伝搬するとき、特定の条件を満たすと直流的な力である「音響放射力」を観測することができ、それを利用すれば、非接触で物体に力を与えることが可能だという。具体的には、定在波による音圧の腹の位置から節の位置に力を受けるとされている。

この音響放射力を応用すれば、物体を空中に浮遊させる「音響浮揚」も実現可能だという。強力な超音波を用いて音響放射力を制御することで、微小物体の浮遊や非接触輸送などが可能となる。しかし、こうした音を利用して微小物体を非接触で移動させる際に、課題となるのが反射音の影響であり、従来技術では対象である微小物体をピンセットなどでつまんで、音響的トラップにセットする必要があり、完全な非接触とはなっていなかったという。

そこで今回の研究では、半球型の超音波トランスデューサアレイをマルチチャンネル化し、逆フィルタによる最適化を用いて、適応的な位相振幅制御を行う仕組みを採用することにしたという。