理化学研究所(理研)は8月19日、おうし座の方向に地球から450光年の距離にある太陽型原始星「IRAS04368+2557」を取り巻く「原始星円盤」(「原始惑星系円盤」の前段階)をアルマ望遠鏡などを用いて観測し、巨大ガス惑星形成の兆候と、その日陰となる冷たい領域を発見したことを発表した。

同成果は、理研 開拓研究本部 坂井星・惑星形成研究室の大橋聡史研究員、同・仲谷崚平 基礎科学特別研究員(研究当時)、同・チャン・イーチェン基礎科学特別研究員(現・客員研究員/米・バージニア大学 Department of Astronomy 研究員兼任)、同・坂井南美主任研究員、台湾中央研究院天文及天文物理研究所のハウユー・リウ助教、名古屋大学 大学院理学研究科 理論宇宙物理学研究室の小林浩助教、千葉大学 大学院理学研究院 宇宙物理学研究室の花輪知幸特任教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天文学専門誌「The Astronomical Jounal」に掲載された。

星間ガスや星間塵からなる分子雲が自らの重力で収縮することで、星は誕生すると考えられており、星の周囲には星に落下しなかったガスや塵によって円盤が構成され、「原始星円盤」と呼ばれている。その周囲からのガスや塵がおおむね終了して重力的に釣り合った半径に落ち着くと、一段階進んで「原始惑星系円盤」となる。

原始惑星系円盤の形状やサイズは、降ってきたガスの角運動量の向きや大きさが大きく影響する。そして、同円盤の中から惑星などが誕生することから、同円盤の形成過程は惑星形成と密接な関係にある。

近年の観測では、誕生したばかりの若い原始星円盤において、すでに環状(リング)構造やらせん状構造がいくつも確認されている。このような円盤の中での「構造形成」は惑星形成の始まり、あるいは惑星がすでに誕生している可能性を示しており、これまで考えられてきたよりもずっと早い段階での惑星形成の開始を考える必要が生じている。

そこで研究チームは今回、この構造形成の過程や、構造が惑星の性質に与える影響を調べるため、IRAS04368+2557の周囲の原始星円盤に着目することにしたという。具体的には、アルマ望遠鏡と米国の「VLA」を用いて、高空間分解能の電波観測が行われた。