EDR(Endpoint Detection and Response)に強みを持つサイバーセキュリティ企業Cybereasonの日本法人であるサイバーリーズン・ジャパンの社長に、山野修氏が6月1日付けで就任した。
山野氏は1996年にコンピュータ・アソシエイツの会社設立に参画した後、1999年にRSAセキュリティの社長に就任。以降はマカフィーやアカマイ・テクノロジーズなどの代表を歴任し、2022年にサイバーリーズン・ジャパンに入社した。
前任のAlon Raskin氏から社長のバトンを引き継いだ山野氏に、現在のサイバーセキュリティを取り巻く課題と、同氏の今後のビジョンを聞いた。
社長就任にあたって
---社長就任までの経緯を教えてください
山野氏:私はこれまでに、マカフィーやRSAセキュリティ、アカマイなど、さまざまな企業でコンシューマー向けやエンタープライズ向けを問わずに幅広くセキュリティ製品に携わってきました。
20年以上外資系企業の社長を務めていたこともあり、実は昨年あたりに「そろそろ卒業しようかな」と考えていたんです。
しかし、これと同時期に「Emotet」などのマルウェアやランサムウェアの被害が急増し、データを人質のように扱う二重脅迫など、現実世界と似た犯罪がインターネットの世界でも起こり始めたのを見て、セキュリティ業界でもまだまだ対応しなければいけないことがあると気付きました。
そうしたタイミングで今年2月にサイバーリーズンから打診があり、今年6月に社長に就任することになりました。
---社長就任のお話を聞いたときはどう感じましたか
山野氏:最初は「そうきたか」という驚きがあったのが正直な気持ちです。
私がこれまで務めたRSAセキュリティ、EMC、アカマイなどはボストンに本社を構えているのですが、サイバーリーズンの本社もボストンにあります。各社が同じ都市にあることもあって、サイバーリーズンにも以前から知り合いが多かったんですね。
私がマカフィーにいた2016年にサイバーリーズンが日本法人を設立したことも知っていましたし、強みとしているEDR製品の市場動向も把握していました。このような経緯があるからこそ、私を選んだのではないでしょうか。
私は若いころから外資系企業の社長を任せていただいた経験がありますので、この経験をどのように生かすのかが命題だと思っています。
---社長に就任して数カ月が経ちますが、今のお気持ちはいかがですか
山野氏:日本では予想以上にEDR製品が普及している点に驚きました。特に大企業では、グループ全体で導入が急ピッチで進んでいますね。今後は中堅・中小企業でもEDR製品がますます普及していくと思っています。
日本企業が使っているPC端末にはほぼ100%アンチウイルスソフトが入っているのですが、これは日本特有の現象です。海外では、大企業ではアンチウイルスソフトが普及していますが、中堅企業や小規模な企業ではほとんど使われていません。
このように、日本ではセキュリティ製品の導入に対する期待が大きいので、EDR製品も高い割合で導入が進みそうです。EDRの市場拡大に制約やハードルは感じていません。
---今後の目標を教えてください
山野氏:先ほど、日本では高い割合でEDR製品が普及するはずと言いました。EDRのE(Endpoint)はPC端末やサーバを意味しますが、現在当社ではこれを拡張したXDR(Extended Detection and Response)製品も手掛けています。
XDRはエンドポイントだけではなく、ネットワークやクラウド、認証システム、オンプレミスのデータセンターなども包含して全体的に守るセキュリティのアプローチです。私としてはXDRも非常に大きな市場があると見込んでいますので、この領域でも成長したいと思っています。
当社の技術力であれば、企業の規模は今後数年以内に2倍くらいまで成長すると思っています。これをどれだけ早められるかが、私の個人的な目標でもありますね。当社はMDR(Managed Detection and Response)などセキュリティ製品だけでなく、サービスも付帯するソリューションを提供していますが、サービス面の拡大が事業成長のカギになりそうです。
私の前任の社長は2人ともイスラエル出身で、ここまで日本法人を育てました。日本での主な販売手法は直販ではなく、販売パートナー企業との協力が不可欠です。私はパートナービジネスの経験も長いと自負してますので、日本の津々浦々まで当社の製品やサービスを提供できるよう、日本人の社長ならではの経営で会社をさらに成長させていきます。