「実学教育と人格の陶冶(とうや)」を建学の精神として掲げ、日本有数の学生数の多さを誇る近畿大学(近大)は、2025年に創立100周年を迎える。同大学はこの節目を迎えるにあたって、学内施設整備へ大規模な投資を決定。東大阪キャンパスなどの設備充実を推進している。

  • 近畿大学の東大阪キャンパス

    近畿大学の東大阪キャンパス

近年のコロナ禍を契機として、各大学がリモート教育の導入・活用を行う中、近大はなぜキャンパス設備を充実させるための投資を行うのか。そして、今まさに大学の主役である学生にとって、キャンパスに足を運ぶ価値は何なのか。

今回は、近大のキャンパス戦略に携わる同大学副学長の渥美寿雄氏と、東大阪キャンパスに通う大学生2名へのインタビューを通して、「コロナ時代におけるキャンパスの価値」に迫る。後編では、東大阪キャンパスに通う2人の近大生へのインタビューを通して、コロナ時代を生きる大学生のキャンパスライフを見つめる。

  • 今回インタビューを行った西陽菜さん(総合社会学部・3回生)と岩城篤さん(情報学部・1回生)

    今回インタビューを行った西陽菜さん(総合社会学部・3回生)と岩城篤さん(情報学部・1回生)

コロナ禍での大学スタートは最悪でした。

--まずは、おふたりの近畿大学入学の経緯を教えてください。

岩城さん:僕はまず、大学附属の高校に入りたいと考えて、近大附属の高校を受験しました。その時点では進学先を近大に限っていたわけではなかったです。

西さん:私も岩城くんと同じ高校出身なのですが、高校入試を控えた当時は、目指していた大学の推薦枠がある学校を探していました。その条件を満たした中で、自分が求めるその他の条件と合っていたので、近大附属の高校を選びました。

--なるほど。では早速大事な質問ですが、近大に入って楽しいですか。

西さん:私はすごく楽しいと感じています。

岩城さん:僕も今はすごく充実していると感じます。ただ、入学当初の4月・5月はちょっときつかったですね。僕が所属する情報学部はオンライン授業が多く、対面の場合も週1回集まる程度なので、友達はほぼいませんでした。

5月ごろに写真部というコミュニティができてからは、かなり充実し始めましたね。先輩たちが新入生向けにイベントなどを企画してくれたので、結構救われたところがあります。

--そういう意味だと、西さんはきっとコロナ禍の始まりと同時に入学でしたよね。

西さん:はい、大学のスタートはもう最悪でしたね。最初は大学に行く機会はほとんどなくて、しばらくは高校時代の友達との関わりしかありませんでした。大学から近大に入った人には、完全に孤立していた人も少なくないと思います。

私は入学後、運動部に所属したのですが、9月ごろまで対面での練習や試合はほとんどなく、オンラインでの活動や個人練習のみ。「ほかのことがしてみたい」という想いが生まれて、すぐにやめてしまいました。

それからは、ゼミでの時間や友達とのコミュニケーションなどが充実していて、たくさん楽しむことができています。

  • 岩城さんが所属する情報学部は2022年度に新設。開設に合わせて学部棟も建設された

    岩城さんが所属する情報学部は2022年度に新設。開設に合わせて学部棟も建設された

コロナ禍でのキャンパスでの過ごし方とは

--今おふたりは、授業を受けるためにどれくらいのペースでキャンパスに来ていますか。

岩城さん:僕の場合、授業自体は週5日ありますが、コロナ対策としてリモートと対面を1週間おきに変更する講義があるので、キャンパスに1度しか来ない週もあれば、3日来る週もある、といった感じです。

西さん:私は、授業数自体は少ないですが、曜日がばらけているので毎日通学しています。それに加えてオンデマンド授業も受けていて、キャンパスでの授業後は、すぐに帰るか、大学内の施設でオンデマンド授業を受けるなどして過ごしています。

--では、キャンパスでの授業以外の時間はどう過ごしていますか。

西さん:私は所属するゼミの先生が大好きなので、友達とゼミの教室に立ち寄って話すことが多いです。ほかにも、読書をするために図書館に行ったり、作業スペースで就職活動に向けたエントリーシートを書いたり、友達とお昼を食べたり、といった感じでしょうか。

岩城さん:僕は基本的に、授業が終わるとすぐ帰っていますね。大学には高校時代の友達もいますが、行動を共にするのは学部の友達が多くて、一緒に駅へと向かっています。

  • 数多くの本が並ぶアカデミックシアターでは、黙々と作業する学生の姿が多く見られた

    数多くの本が並ぶアカデミックシアターでは、黙々と作業する学生の姿が多く見られた

学生から見たリモート授業と対面授業のメリット

--リモート授業と対面授業を経験されていると思いますが、まずリモート授業のメリットととして感じる点を挙げていただけますか。

西さん:リモートのメリットは、大人数の授業でも意見を発信しやすい点だと思います。オンラインツール上での授業だと、コメント機能などで発言できるので、その点は便利です。また、やはりいつでもどこでも受講できる点は、リモートだからこその便利なところですかね。

岩城さん:授業前後の時間に余裕が生まれる、というのもありますね。僕自身は家が遠く、授業時間よりも移動時間の方が長い日もあります。リモートだと、授業以外に必要な時間がほとんどないので、ほかの予定を詰めることもできて便利ですね。

--確かに、移動時間なども考えるとリモートの長所は目立ちますね。では逆に、対面のメリットはどこにあると感じられていますか。

岩城さん:僕は、2回生までの間はすべて対面が良い、と思っています。やはり僕自身が入学当初、人との関わりがなく「何か違うな」と思っていました。

対面のクラスがあるだけでこんなにも違うのか、と思うほど、コミュニケーションや人との関わりが増えたので、その点では対面授業が増えてほしいと感じています。

西さん:私も、先生や友達と仲良くなりやすいという面では対面のメリットが大きいと思います。それに、先生方は入学当初から、会話の中で就職など先を見据えたアドバイスなどをくれていて、とてもありがたかったなと感じています。

もう1点、ゼミや講義の中で映像制作や広告制作などのグループワークを行う際に、対面のコミュニケーションの取りやすさを感じます。表情を見ながらスムーズに話し合えるのは、リモートにはないメリットですね。