ローコード開発が注目されている。保険業界大手のSOMPOひまわり生命保険では、新規事業であるネット販売保険商品を開発するにあたり、ローコード開発を導入。実にコストを6分の1に、開発期間を半減させる成果を挙げたという。

7月12日に開催された「TECH+セミナー ローコード/ノーコード開発 Day Jul. システム開発をビジネス戦略のコアに」に、SOMPOひまわり生命保険 情報システム部 IT開発グループの金田幸男氏が登壇。ローコード開発導入に至った背景や、経過、課題について話した。

消費者の変化に合わせ、ネット販売商品を開発

昨年創立40周年を迎えたSOMPOひまわり生命保険は、約2000万人の顧客を持つ大手保険会社だ。6年前から「健康応援企業」というビジョンを掲げており、「従来の生命保険の”万が一のための金銭的サポート"に加えて、毎日の健康・予防に寄り添う健康応援事業を進める」と金田氏は説明する。これにより提供する価値は、「インシュアヘルス」――保険の”インシュアランス”と健康応援の”ヘルスケア”を組み合わせたものだ。

そんな同社では、「保険商品自体の概念を本気で変えていく」(金田氏)ためのチャレンジの1つとして、2018年よりネット上での保険商品の提供を進めているという。そうしたインシュアヘルス商品の第2弾となったのが、女性特定がんを重点保障とする「リンククロス ピンク」である。開発プロジェクトリーダーとなった金田氏はこのとき、ローコード開発を用いることにした。約4年前のことだ。

これまでのやり方・基盤に感じた「限界」

ローコード開発導入の背景にあるのは、環境の変化だ。金田氏は次のように説明する。

「デジタル化が急激に進化し、お客さまの購買行動も、スマートフォンから手軽にECサイトを利用するなど変化しました。自分のニーズに合ったものをピンポイントに素早く手に入れることが可能な時代になったのです。保険業界も、市場のニーズに合わせて、スピーディーな商品投入が求められています」(金田氏)

商品開発のプラットフォームであるシステム基盤は、従来の対面で販売する商品を想定して構築したものであり、ウォーターフォール型の商品開発では開発期間が1年を超えることも多い。「これまでと同じ基盤・同じ手法では、いくら生産性を上げても限界がある」(金田氏)ことから、既存の基幹システムとは別に、ネット販売商品を開発するための基盤を構築することにしたという。

ネット商品開発基盤の構築にあたって掲げたコンセプトは3つだ。 1.ローコードプラットフォーム(開発手法自体を変える) 2.疎結合アーキテクチャ(開発基盤を従来の基盤と切り離す) 3.シンプルな商品とシステム(システム開発の範囲を再度整理)

ローコード開発では、「Pega Platform」を導入した。評価のポイントとして、画面作成の容易さや信頼性、保守性、拡張性などがあるが、中でも重視したのが、生産性とコストだという。Pega Platformは従量制であり、商品特性や販売動向に応じてコスト対応ができることから、「スモールスタートを想定した商品でも、過度なコストをかけずにスタートが可能になると考えた」と金田氏は語る。

疎結合については、基幹システムから商品基盤を切り離すことで、期間とコストの負担が大きい基幹システムの制約を取り払うことにした。システム化は最小限に抑え、手作業やRPAを用いて事務処理を補うようにしたが、契約管理を手作業で行うとなると、作業が煩雑になる。そこで、特約をつけない、保険料の払い込み回数を限定するなど、商品側に制約を設けた。これは、商品設計自体のシンプル化にもつながったという。

  • ネット商品開発基盤のコンセプト